第五十九章 トンの町 7.微睡みの欠片亭
この日、シュウイには一つの懸念があった。
……そして、「微睡みの欠片亭」での夕食後に、その懸念が的中した事を知った。
「シル……お前、どうあっても、マンゴスタのジュースを飲む気だね……?」
キラキラと瞳を輝かせて自分を見つめるシルを見て、シュウイは溜息を吐いた。まぁ、果実水に対する今までの執着ぶりと、先程のマンゴスタへの食い付きっぷりを見ていれば、充分に想定し得る事態ではある。
「まぁ、良いか。僕もちょっとは飲んでみたい気もするし……」
課題をクリアーして【調薬(邪道)】は初級に上がったが、これは中級への受験資格を得たという事であり、特にできる事が増えた訳ではない。よって、果実水を作る【分離】のスキルにも、これまでと変わったところは無い。代わり映えしないスキルでマンゴスタという曲者果実を扱う事に怯みが無い訳ではないが、えぇい、プレイヤーは度胸だとばかりに、脱臭済みのマンゴスタから水分を【分離】して果実水を作成する。幸いにして悪臭が暴発するような事も無く、マンゴスタの果実水を得る事ができた。
「……うん、ちゃんと美味しくできてるね」
ちらりと傍らのシルを見ると、夢中で容器に首を突っ込んでいる。すっかりお気に召したようだが……
「う~ん……こうなると、タクマにやるのも惜しくなるな……」
脱臭の方法を――恐らくは食べ方も――知らないであろうタクマたちに与えても、悪臭源として処分されるだけだろう。それは少々勿体無いように思える。どうしたものかと少し頭を悩ませるが、その時になって考えようと、あっさり先延ばしを決める。こういうところで悩まないのがシュウイという少年である。
「さて、お楽しみのスキルチェックだな」
――とは言っても、【調薬(邪道)】の課題をクリアーした以外、今日は特別な事はやっていない。アーツ欄を眺めて【錬金術(邪道)】初級と【調薬(邪道)】初級から(仮免許)の表示が消えている事を確認すれば、チェックは終わりだ。【錬金術】と【調薬】の初級は内容が共通しているため、どちらのアーツも仮免許を脱した事になっている。しかし、中級からは内容が違ってくるため、それぞれ別個に修行しなくてはならない。
「……って、【調薬】はともかく、【錬金術(邪道)】は誰に教われば良いんだろう? 迂闊にカミングアウトはできないし……」
しばらく悩んでいたが、ケ・セラ・セラ、なるようになるさと放り投げる。どうせこれはゲームなのだ。くよくよ悩んだところで仕方がない。行き当たりばったりの人生も楽しいではないか。
「それに、いざとなったらベルさんかカナちゃんにアドバイスを貰っても良いし」
――ベルが【錬金術】を取得していたのはβテストの時で、今は【錬金術】からは手を引いている。また、カナが金策用に得ているのは【調薬】であって【錬金術】ではない。しかし、先程も言ったように、そんな事に深く悩まないのがシュウイという少年である。また、それくらいの神経でなくては、「スキルコレクター」などという曲者スキルを使いこなせないのも事実であった。
とりあえず【錬金術】の事は頭から追い払って、【調薬(初級)】の内容を確認する事にした。
「え~と……へぇ……正式に初級を取得すると、自動的に幾つかのスキルを得られるんだ……あ、これは【錬金術(初級)】も一緒なのか……」
正式に【調薬(初級)】および【錬金術(初級)】を取得すると、プレイヤーは以下のスキルを自動的に取得する。
【計量】作業に必要な量を正確に量り取る事ができる。
【相転移】物質の温度を調節して、固体・液体・気体の各状態に変化させる。
【成形】物質の形だけを変える。
これらのスキルを取得する事で、プレイヤーは初級の技能を十全に使える事になり、中級への受験資格を得る。
ただし、ヘルプファイルを読み込んでいくと、初級の段階で作業を繰り返してスキルに習熟しておくと、生成物の品質が上がるだけでなく、中級に昇級する時の課題も少なくなるとなっていた。
「へぇ……だったら焦って受験するより、初級を完全に使いこなせるように練習しておいた方が良いか。
ふんふんとヘルプを読んでいたシュウイであったが、初級取得の資格に関する記述のところで首を傾げる事になった。
〝……プレイヤーが【錬金術(初級)】を修了するためには、上記のスキルを使用して、初級の体力回復ポーションおよび魔力回復ポーションの作製に連続して二回以上成功する必要がある。逆に言えばそれ以外の作製は必須ではない〟
「……あれ? 僕、初級を取得した後で、体力回復ポーションと魔力回復ポーションの作り方を教わったよね? ……「邪道」の場合は違うのかな?」
だとすると、今後アドバイスを受ける場合にも、少し注意して聞く必要があるだろう。シュウイはその事を心に留めた。
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★《シュウイのスキル/アーツ一覧》
レベル:種族レベル8+
スキル:【しゃっくり Lv2】【地味 Lv6】【迷子 Lv3】【腹話術 Lv2+】【解体 Lv9】【落とし物 Lv10】【べとべとさん Lv3】【虫の知らせ Lv8+】【嗅覚強化 Lv7+】【気配察知 Lv7+】【土転び Lv3+】【お座り Lv3】【掏摸 Lv0】【イカサマ破り Lv5】【反復横跳び Lv4】【日曜大工 Lv3】【通臂 Lv1+】【腋臭 Lv1】【デュエット Lv5】【般若心経 LvMax】【弓術(基礎) Lv5】【狙撃(基礎) Lv7】【投擲 Lv6】【器用貧乏 Lv5】【飛礫 Lv6】【擬態 Lv3】【ウェイトコントロール Lv3+】【隠蔽 Lv3】【疾駆 Lv3】【給水 Lv3 霊水に統合】【古道具屋 Lv1】【聴耳頭巾 Lv5】【大食い Lv0】【闇魔法の素地(オーク) Lv0】【木登り Lv3】【霊水 Lv2】【福笑い Lv0】【掘り出し物 Lv0】【堆肥作り Lv0】【ろくろ首 Lv0】【メビウスの壁 Lv0】【整理整頓 Lv0】
アーツ:【従魔術 使役術に統合】【召喚術(仮免許) 使役術に統合】【杖術(物理) 皆伝】【調薬(邪道) 初級】【錬金術(邪道) 初級】【火魔法(オーク) Lv3】【土魔法(ホビン) Lv3】【水魔法(ホビン) Lv0】【暗器術 初級 Lv2】【聖魔法 初級 Lv1】【死霊術(ネクロマンシー)(聖) Lv1 使役術に統合】【使役術 Lv1】
ユニークスキル:【スキルコレクター Lv7】
称号:『神に見込まれし者』『ホビンの友』『ツリーフェットの友』『霊魂の友』
『泉の精霊に祝福されし者』『泉の精霊の謝罪を受けし者』
従魔:シル(従魔術)




