英雄の正体はゲロまみれ
「今後は、タマナ組の侵攻だ!」
ギルド長が、
自分自身をも鼓舞するのかのような強い口調で言った。
「『遠見』のスキル持ちが確認した。
今はまだタマナ組の辺りで、部隊を集結中らしい。
ここに到着するのは3日後の見込みだ」
今はリキャスト待ちだけど、
そのくらい後なら俺の『アーティファクト』も使えそうだ。
少なくとも今日は祝勝会の肉を食べるのに専念できる。
とはいえ、今度の相手は人間だ。
目の前でグロイ光景が広がるのを見続けるのはつらいな。
まぁ、目をつぶってれば、誰かが倒してくれるだけマシか。
「冒険者登録してるものは全員参加して欲しい。
最低報酬はさっきと同様だ」
ギルド長はそう言うとココロに耳うちした。
「例の銅像さんはいけそうか?」
「大丈夫です」
「次の戦いでも敵の攻撃は『銅像』さんが受けてくれる。
おまえらは、敵を背後から討ってもらうだけでいい!」
「「「おぉ!!」」」
冒険者諸君、俺の痛みを知らないで盛り上がるのはやめて!
まぁ、俺が銅像化するのが一番確実なのは否定しない。
その後、ココロがギルド長に、何か耳うちをしていた。
ギルド長は、それに驚いていた。
何を話していたのだろうか。
「わかった。それは、こちらで対処する」
とギルド長は話していた。
こうして周りが盛り上がっている間に、
俺たちは、腹いっぱい肉を食べまくった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
俺たちは部屋に戻り、作戦会議をした。
「敵は、ボクたちが
今回のスタンピードで弱ったところを叩く算段だったらしい。
僕らの戦闘があと2日はかかるとよんでたらしい」
予定外の結果って訳ね。
「彼らの到着は3日後の予定だけど
ボクたちの状況を知って急いでくるかもしれない」
「つまり、いつ来るかわかんないってことね」
「まぁ、そういうことだね」
ココロは苦笑いをした。
「今回の相手は人間だ。当然、人殺しをすることになる」
「うん」
「サクタは最前線でそれを見せられる。
目をつぶっててくれて手構わない。なんなら、寝ててもいい」
「人殺しを見るのは初めてだ。
正直、自信はない。状況次第ではそうするよ」
実際、そうなってみないとわからない。
「たぶん、大丈夫だと思うけど、一応言っておくことがある。
連中は全員にあのナイフを持たせている」
「あれで殺せば、スキルが奪えるってナイフか」
「うん」
「あれで、トドメをさした時だけね。
ただ、あれ自身に毒を塗っても同じ効果があるらしい」
「マジか」
ココロは静かに頷いた。
「サクタには、そもそも攻撃が届かないので毒も入らない」
「ボクとユーマはそれができない。
だからなるべく後方から、
『清水』や『火炎魔法』で攻撃するのがおススメだ。
最終判断は、ユーマ自身に任せるよ」
「あぁ」
・ ・ ・ 2日後 ・ ・ ・ ・
ヤツらは予定を大幅に早めて来たらしい。
スタンピードの時と同じく、俺を銅像として設置するのだが、
ココロは皆を集め、俺が『アーティファクト』を使うのを見せた。
「「「おぉぉ、今回も『銅像』さんが味方してくれる」」」
皆の関心事は、『銅像』さんが誰なのかよりも、
今回も『銅像』さんが参戦してくれるのか……だった。
ちょっとやる気が萎える。
俺は入口よりやや前方の位置に「設置」された。
敵の姿が見えてきた。
なかには、戦う前からゼイゼイ言ってるのがいる。
連中は、ほとんど歩兵だった。
ずっと走らされてきたのだろう。
最初に馬に乗っているヤツが来て、
馬に蹴られたが、はじき返した。
馬はそれでバランスを崩し、乗ってるヤツは落馬した。
冒険者たちに、切りつけられ絶命する。
次に、巨大ハンマーを使う大男が、馬を降りて駆けてきた。
ノックバックを狙うつもりらしいが、こいつもはじき返し倒れた。
こいつも冒険者たちに、切りつけられ絶命する。
次に近づいてきたヤツは、とてもたくさん着込んでいた。
俺よりだいぶ前でユーマの火炎魔法が着弾し爆発した。
ユーマは結局、後方からの支援を選んだようだ。
爆弾を着込んで、自爆攻撃を狙ってたらしい。
敵が少し怯んできた。
後方の魔導士部隊が詠唱を始めた。
俺の頭上に巨大な魔法陣が、いくつも登場した。
これは、広域攻撃魔法というヤツなのでは?。
「前衛。範囲攻撃が来るぞ!!」
誰かが、そう叫んだ。
しかし、魔法は発動しなかった。
いや、違う。敵の魔導士が燃え始めた。
よくわからんが、あれもはじいたらしい。
これは……すげぇな。無敵じゃん、俺。
その後、単発魔法、火矢、砲撃などなど飛んで来るが、
すべてはじき返した。
俺の『アーティファクト』は、
敵の両目に対し色のついたレーザーが照射される。
指揮官自ら、隠密部隊と共に奇襲をしかけるも、
それで、可視化されていた為、奇襲にならず、
冒険者たちに切り殺された。
俺の『アーティファクト』は、
さらに別の場所にも、レーザーを照射していた。
ギルド職員だった。
どうやら、敵のスパイだったようだ。
ギルド長が半殺しにして捕縛した。吐かせるためだろう。
ココロがギルド長に話していた内緒話は、
このことだったようだ。
戦闘は、夜に始まり、陽が昇るころまで続いた。
正直、途中からは寝てた。
途中、何が起こったのかはわからない。
でも、寝れたってことは、痛くなかった訳だから、
俺の元にたどり着くまでに倒せたか、撤退したのだろう。
ゆっくり目を開けると朝陽がまぶしかった。
そうだった。動けないので、朝陽を避けれなかった。
仕方ないので、二度寝した。
「サクタ、サクタ……」
とても、カワイイ声で、目を覚ます。
ココロだ。
「大丈夫だった?」
「あ、あぁ」
目を開けると、
目の前にはかなりグロイ死体の山が積まれていた。
思わず吐いた。
鎧の中で吐くということは、
その匂いから逃げられないということで……。
2度、3度吐く羽目になった。
こうして、ギルドに戻り『アーティファクト』を解除したところ、
ゲロまみれだったので「ゲロのサクタ」という二つ名がついた。
もう、今回は、散々だ。
ふと気がついたのだが、今回は、組長が来ていた。
まさか、組長の前で、ゲロまみれの姿をさらすことになろうとは。
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