銅像だけが英雄になった日
「スタンピードだ!」
ギルド長が、強い口調で言った。
「冒険者登録してるものは全員参加して欲しい」
ギルドは最低報酬を書いた紙を貼り出した。
一番低いランクで金貨1枚(10万円相当)。
俺たちのランクなら金貨10枚(100万円相当)が保証される。
そこに、討伐報酬が上乗せされる。
悪くない金額だ。
報酬金額に冒険者たちが目を光らせる。
なにより、討伐に失敗すれば、
俺たちは泊まるところさえ失いかねない。
怪我人以外は、ほぼすべて参加するだろう。
ココロは次の展開が読めないからということで、
俺を銅像のまま墓地から抱えてきた。
「みんな聞いてくれ!」
「ボクたちは、この銅像を入口に設置する。
これは、すべての敵を引き付ける特別な効果がある。
敵は、すべてこの銅像を目指していく。
他の人が狙われることはない」
「いくらなんでも、盛りすぎだろ」
「いいえ、ココロさんの言う通りです。
私も、この目で見て来ました」
「まぁ、カレンさんが言うんなら信じてみるか」
「だから、あわてずに、その敵を倒して欲しい!」
「「おぅ、任せとけ!」」
俺の痛みは……?
耳元でココロがささやく。
あいかわらず、カワイイ声だ。
「ごめんね。頼りにさせてもらうよ」
「おう、任せとけ」
かわいい声で、耳元で、こうまで言われちゃ逆らえない。
ココロはウルク外町の入口に、俺の「銅像」を立てた。
耳元でささやく。
「あとで好きなだけおごるから、今はご飯我慢してね」
「おう!」
何度も言うが、この声には逆らえない。逆らえないんだ。
そのくらい、カワイイ声なんだ。
ココロは『世界の知識』で状況を確認しながら、
俺の横で待機する。
ココロは防御力が低いので危ない気もするが、
こうすることで、他の冒険者を前に出す作戦らしい。
頭のいいココロの作戦なら、従うまでだ。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「あと5分くらいで来るよ。お願い、頑張って!」
ココロは、俺の背中をポンと叩く。
「前衛のみなさーん、
あと5分ほどで来そうなので、お願いしま~す」
ココロが精いっぱいの大きな声でそう言いながら、
後方に下がっていく。
「まかせろ!」
そう言ってココロの代わりに俺の横に出て来たのはユーマだ。
例の薙刀を装備している。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
遠くに土煙が見え始めた。
かなり左右に幅があるが、大丈夫なのか?
俺の鎧が自動的に動く。
例によって、何かが出始める。
「「ホントに、銅像に向かって行くぞ」」
「「いいぞ、銅像さん」」
「「「銅像、銅像、銅像」」」
いろんな言葉が皆で合わせたかのように、
同時に聞こえてくる。
これが、この町の語彙力の限界ということか?
このスタンピードが終わったころには、
俺は、この町の英雄になっていそうだな。
第1陣が、俺にぶつかってくる。
ユーマが俺に当てる前提で、薙刀をぶん回してくる。
「痛いんだが……」
「でも、お前は無事だろ」
「そうだけど……」
「なら、いいじゃん」
痛いんだけどな。
それを見て、他の冒険者たちも負けじと前に出て来た。
俺の鎧は順調に敵の注意を引き付けている。
敵にボコボコに殴られているうちに、意識が薄れてきた。
・ ・ 数時間後 ・ ・ ・
スタンピードは倒し切ったらしい。
俺は、ココロに起こされる。
「もう解除していいよ」
「お、おぅ」
俺は『アーティファクト』を解除した。
これが、失敗だったとは、俺たちには想像すらできなかった。
「ふぅ、久しぶりに動ける」
「ご苦労様。ありがとね」
ココロとユーマは、
俺の周りに散らばった「討伐証明部位」を拾い集めていた。
俺も、それを手伝った。
・ ・ 冒険者ギルド ・ ・ ・
ギルドでは、祝勝会の用意がされていた。
今回のスタンピードは、死傷者がひとりも出なかったらしい。
ココロは、檀上に担ぎ上げられ、皆のお礼を聞いていた。
うちのパーティリーダーだ。
俺たちの代わりに賛辞を受けるのは当たり前だな。
次は、俺の番だな。
……と、檀上に上がろうとすると、制止された。
「お前、参加してなかったじゃないか」
「えぇ?」
「いや、鎧着て参加してたけど……」
「今回の功労者は、このココロと『銅像』だ」
「いや、その『銅像』なんだけど」
「お前、全然似てないじゃないか」
「それじゃ、ここで着てみろよ」
『アーティファクト』は、リキャスト待ちだった。
換装できなかった。
換装したら賛辞は得られても、ご飯がお預けになる。
「ほら、できないじゃないか」
「くっ;」
「ごめんね。次は皆の前で『アーティファクト』解除しよう」
「あぁ」
「とりあえず出された料理が、
他のヤツらに食べられる前に俺たちもいただくか」
「ほぅ…らな」
肉に口にいっぱい含んだ状態で、返事をするユーマ。
すでに食ってたのかよ。
負けられないな。
両手に肉を手にしたそのとき、とんでもない一報が舞い込んだ。
「今度は、タマナ組の軍勢が近づいてきました」
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