ダンジョンの中で
初めてダンジョンに入った。
入ってすぐのところは、通路のようになっていた。
通路の幅は、一車線の道路くらいで、天井の高さも、通路の幅と同じくらいの高さに感じた。
壁や天井が緑っぽく光っているので、周囲を視認出来るが、光量控えめのぼんやりした光なので、薄暗いという印象だ。
通路を歩いていくと、右と左に分かれている。
そして、俺たちの後ろからは、深い緑色の服の衣服に身を包んだヤツらが、
ニヤニヤしながら近づいてきている。
ダンジョンの光の色と類似しているので、注視していなければ、見失ってしまいそうだ。
右の道の先にも、左の道の先にも、同じような恰好をした素行の悪そうなヤツらが待ち構えている。
3方向から挟撃するという目論見らしい。
そして、予想通り、そうなった。
まず先に、ココロが「3,2,1」とカウントし、カバンの中から、強力LEDライトを光らせる。
とんでもなく明るいヤツで、薄暗さになれた相手の視界を封じる事が出来た。
…って、まぶしすぎ。
あらかじめ、話を聞いてたから目を瞑ってたんだけど、
それでも、まぶた越しに受けた光で、赤い残像が残って、目がチカチカしてる。
全く、とんでもないものを持ち歩いてるな…。護身用ってヤツなのかな…。
そして、相手が視界を奪われて、もたついているところを、
ユーマが薙刀を使って、奴らの足の腱を切り裂いていき、歩けないようにした後、
ユーマが奴らを抑えつけて、手を後ろに回し、
ココロが左右の親指を電気工事とかで使うような大き目の結束バンドで縛り付けて動けないようにした。
ココロは、高3と言ってたけど、正確には高専の3年生で、ロボットとか作ってるらしく、それに使うものがカバンに入ってたらしい。
2人の連携が、素早すぎて、呆気にとられながら見ていた。今回、俺には出番なし…。
相手の足の腱を切り、歩けないようにしたけれど、殺してないから、ペナルティにはならないハズだ。
とはいえ、連れて帰るには、人数が多すぎた。ここまで多いとは想定してなかった。
ダンジョンの入り口付近に、ひとまとめに集めて、ロープで縛り、動けないようにした。
冒険者ギルドに戻ると、カースさんが驚いたように、こちらを見ていた。
おそらく、俺たちが帰って来ない…という事を予定していたのだろう。
でも、平静を装って、こちらの報告を聞いていた。
「彼らは、こちらで処理しておきます。」といって、後ろに戻ろうとしたので…
ユーマがカースさんの腕を捕まえて「銀貨9枚」と言って睨みつけた。
「彼らを回収するまで、まだ判断出来ませんので…」と渋ったが、
更に強い力でカースさんの腕を握りしめ「銀貨9枚」と言って、もう1度睨みつけた。
「い、痛っ…たたた…」
カースさんは、しぶしぶ「銀貨9枚(9万円相当)」を取り出した。
なんだか、自分の財布の中から出しているように見えたが、特にツッコミは入れない事にした。
余程、強い力だったのか、カースさんの腕には、ユーマの手形がガッチリと残っていた。
・ ・ ・ ・ ・
翌日、カースさんから、また、偽物と思われる「なんちゃって指名依頼」を提示された。
「メンド草」という植物の採取らしい。
「めんどくさ」と読むのかと思ったが「めんどそう」と読むらしい。
ココロが言うには、この植物はダンジョンに入らなくても、普通に生えてるらしいのだが、
あえて、ダンジョンの中に生えているものを採取して欲しいという依頼だ。
依頼内容:「メンド草採取20本」
依頼料 :銀貨9枚(9万円相当)
必要ランク:C以上
概 要:
「木漏れ日のダンジョン」2層の奥地にある「メンド草」を20本採取。
魔物の多い場所なので、周辺に注意しながら、採取を行う事。
尚、1本でも少なかった場合、
違約金が1本につき銀貨1枚(1万円相当)のペナルティを支払う事。
また、例によって、ギルド印を押してない依頼書だ。
ココロの予想によると、今度は、昨日の経験を踏まえた強いメンツで来るだろうとの事。
今日は、俺の出番だな…。
昨日はいわゆる2軍メンバーで、これを突破出来たら、有用なスキル持ちと判断し、
1軍メンバーが、特殊なナイフを使って、スキルと命を奪いに来るという流れになってるらしい。
「木漏れ日のダンジョン」の1層は迷路のようになっていたが『世界の知識』で予習済みのココロの誘導で、スムーズに進めた。
迷路の途中にいくつもの小さな広場があって、そこに魔物が集まっており、時々、通路にも出てくるみたいな感じだった。
最後の広場に、本来なら2層に行くには「フロアボス」みたいなのを倒す必要があったのだが、
少し前に、誰かが2層に降りる為に、倒したようだ。
ここのボスは、倒されると、3時間はリポップしないらしい。
おそらく俺たちを「待ち伏せ」する為に、先行したのだろう。
2層は、ところどころに木が生えている巨大な草原になっていた。
地下だというのに、なぜか「どこまでも高く続いているような青い空」があった。
空には「雲」や「青く光る太陽」があり、時々、小雨も降った。
この階層は、道らしい道がなく、背の高い草をかき分けながら進む。
草は、ユーマだけが、かろうじて、草の上に顔を出せる高さだったが、ユーマが薙刀で道を作りながら先導してくれたので、
特に苦労せず、進むことが出来た。ホントにタフだよな…ユーマって…。
俺たちの前後に、怪しい奴らがいる可能性があるが、草が邪魔をして、よくわからない。
時々、草の間から、突然魔物が出てくる事が多々あったが、奥地まで、ユーマの薙刀だけで、辿り着く事が出来た。
2層の奥には、背の低い草だけが生えた広い場所があり、そこに「メンド草」が生えているのだという。
「メンド草」が生えてるとかいう奥地まで、問題なく着く事が出来たが、
背の低い草だけが生えてる場所に着くと、獣たちも、怪しいヤツらも、茂みの中から顔を出して来た。
気が付くと、いつの間にか、囲まれていたのだった。
ここは、もう俺の出番だろう…。
『アーティファクト!』ナイトのアーティファクトに着替えた。
途端に、周囲の獣も、怪しいヤツらも、みんな俺に向かって来た。
今回もスゴイ数だけど、キラーラビットの時にくらべたら、まだマシかな。
全員が、俺に直接攻撃を仕掛けてくるのかと思っていたが、
遠くから、弓や、ボウガンで俺を狙ってくるヤツもいた。
でも、そいつらの目、耳、鼻に、レーザー、轟音、刺激臭が、直射している為か、
矢は、だんだん当たらなくなり、終いには、鼻と耳を手で覆い、その場にうずくまってしまった。
一方、その間に…
ココロは、主にウォータージェットで魔物の討伐を行い、
時々、怪しい奴らに対しウォータージェットで、親指以外の指を切断し攻撃を無力化したりしていった。
ユーマは、主に怪しい奴らの対処に専念し、
薙刀で足の腱を切ったり、薙刀の刃でない部分を相手の首に当て意識をとばし、
無力化すると、手を後ろに回し、両手の親指を結束バンドで縛って固定していった。
直接攻撃をしてくる奴らの処理が終わると、遠くから攻撃をしながら、
最終的にうずくまってしまっている奴らを捕まえ、手を後ろに回し、両手の親指を結束バンドで縛って固定していった。
捕らえた怪しい奴らは倒した獣の死体と一緒に『無限収納』にブチ込む事にした。
もしかすると『無限収納』にぶち込んだ時点で、まだ息があった盗賊が死んでしまうかもしれないが、
数も多いし、ここに置いていっても、獣の餌食になるだけだし、死んでも構わない奴らだろう。
ラノベだと、こういうのには、生きているものは入れられないというのが定番だと思うが、
俺の『無限収納』は、生きたまま、ブチ込む事が出来た。
盗賊の中には、昨日捕縛したハズの奴らの姿もあった。
腱を切ったハズだが、足が動くくらいまで、治療されていた。
生け捕りした奴らの中に、ボウガンを持った「カースさん」がいた。
カースさんに死なれると、これまでの1件を証明するのが面倒になるので、
『無限収納』ではなく、拘束したまま、ギルドまで連れていく事にした。
自害されても困るので、念のため、さるぐつわもしておいた。
念の為、所持品検査をすると、服の中からナイフが出て来た。
たぶん、これが、ココロが言ってた「スキルを奪えるナイフ」とかいうヤツなのだろう。
持たせておくと危なそうなので、押収した。
そういえば「初心者狩り」の奴らの、所持品検査するのを忘れていた。
同じナイフを持ってるらしいが、
もう『無限収納』にブチ込んでしまったので、面倒なので、回収は後で考える事にした。




