偽依頼の受注
ユーマの「薙刀」が完成した。武器屋で素振りをしてみる。
まるで踊ってるかのようにキレイな動きだ。
技を極めると、美しい動きになると聞いた事があるが、まさにそんな感じだ。
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冒険者ギルドに向かう前にココロから、先に聞いておいて欲しい事があると言われた。
「ボクらのギルド受付担当になったカースさんだけど…。念の為『世界の知識』で確認したんだ。」
「なんか隣国と通じていて、スキルと経験値を奪う事が出来る「特殊なナイフ」を持ってて、
同じナイフを持ってる「初心者狩り」の連中と手を組んでるらしい。
ダンジョンの中で死ぬと、遺体や持ち物がダンジョンに吸収される事を利用して、
彼らは、ダンジョンで、自分より弱い人を殺して「スキル」を奪い続けてるらしい。」
「マジか…」
結局、ここの信用出来ないヤツらは、どこにでもいるのな…。
「ボクらも、レベル13になり、それなりに強くなってると思うけど、
しょせんは子供の体なので、大人の腕力や、大きな体格には勝てないかもしれない。
それに数で来られると、ボクら3人では、厳しいかもしれない。
でもボクらに、何か罠を仕掛けてくるのは避けられないと思う。だから…」
「だから…?」
「うん…だからね。
あえて、騙されたフリをして、今のうちに返り討ちにしようと思うんだ。
こちらには『アーティファクト』を持ってるサクタがいる。勝算はある。」
「お、おぅ…」
ちょっと意外だな。ココロは、そういうのには係わらないようにすると思ってた。
「それでね…」
…と、ココロは、俺たちに作戦を耳打ちした。
・ ・ ・ ・ ・
冒険者ギルドに行くと、カースさんから、俺たちに出来立てのCランクのギルドカードを渡された。
この前、回収した「先輩冒険者」と同じCランクだ。
Cランクは銀ランクとも呼ばれ、中堅(一人前)の冒険者として扱われる。
これにより、Cランク以上、Aランク迄の依頼を受けられる権利を得るが、
Bランク以上の依頼は、リスクが大きいので「自己責任」とされている。
Sランク:魔金:円形の刻印:虹色・淡い自発光
Aランク:魔銀:円形の刻印:銀色・淡い自発光
Bランク:金 :円形の刻印:金色
Cランク:銀 :八角形の刻印:銀色
Dランク:白銅:六角形の刻印:白銀色
Eランク:黄銅:五角形の刻印:黄金色
Fランク:赤銅:四角形の刻印:銅色
Gランク:鉄 :三角形の刻印:鉄色がかった暗い青色で、わずかに緑みを帯びた色
・ ・ ・ ・ ・
俺たちが、ギルドカードを受け取り、首にかけた後、
カースさんは、俺たちに、指名があったとして、1つの依頼を差し出して来た。
昨日来たばかりで、指名なんて来るはずない事は考えてもわかると思うのだが…。
今までも、こんな方法で「初心者狩り」をやって来たのだろうか?
依頼内容:「初心者狩りの捕縛」
依頼料 :銀貨9枚(9万円相当)
必要ランク:C以上
概 要:
「ウルク」近郊の「木漏れ日のダンジョン」で、初心者パーティを狙った「初心者狩り」が発生している。
「木漏れ日のダンジョン」内を捜索し「初心者狩り」を捕縛する事。
情報を引き出す必要があるので、誰1人として、決して殺してはならない。
もしも殺してしまった場合、1人に対し金貨5枚(50万円相当)のペナルティを支払う事。
…と、いう感じだ。殺したらペナルティと書かれてるし、
依頼は銀貨9枚なのに、ペナルティはひとりにつき金貨5枚と言ってる時点で、とても、うさんくさい。
ココロは、依頼書のギルド印の押されるべきところを、あえて指で押さえた状態で、俺たちに見せた。
おかげで、ギルド印がない(偽物の)依頼である事を、俺たちも共有した。
そして…
「わかりました、引き受けます。」
ココロは、計画通り、偽依頼と思われる依頼を受けた。
・ ・ ・ ・ ・
敵も『無限収納』で運べば楽なのだが、切り札はギリギリまで温存しようという事で、
先に、長いロープを買ってから、現地に向かった。
「木漏れ日のダンジョン」は「ウルク外町」から、森とは違う方角に徒歩で三十分程度の距離だ。
短い雑草が生い茂る草原の中に作られた道で向かう事になる。隠れる場所など、どこにもない。
「ウルク外町」からは、何人かが、後ろから付いてきてるのがバレバレだ…。
彼らは、全員が、上下共に、深い緑色の衣服で、同色の手袋と、同色の靴を着用していた。
でも、ダンジョンに入るまで仕掛けて来ない事はわかっているので、
気づかないフリをしながら、ダンジョンに向かった。
ココロの『世界の知識』によると、今回絡んでくる奴らは、レベル5以下の弱いヤツだそうだ。
こちらの力やスキルを図る事と、あえて殺させてペナルティを支払わせるのが主目的らしい。
たぶん、次もあるから…という事で『アーティファクト』は使わず温存。
ユーマの薙刀メインで、切り抜ける予定だ。
但し、もしも、ユーマがケガを負うようなら、ココロも参戦。
ココロもケガを負うようなら、俺の『アーティファクト』解禁という作戦だ。
ダンジョンの入り口では、素行の悪そうなヤツらが、10人ほどいて、俺たちを見ながら、ニヤニヤしていた。
俺たち、いや、正確には、ココロを見ながら…だろう。カワイイからな…。
こいつらも、尾行?してきたヤツらと同じように、全員が、上下共に、深い緑色の衣服で、同色の手袋と、同色の靴を着用していた。




