事後処理とランク新設
拘束したカースさんを連れて、冒険者ギルドに戻ると、ギルドの中がザワついた。
受付のカレンさんが、カウンターから出てきて、
「何があったんですか?」
と聞いてきた。
「それを説明したいので、ギルド長に面会をお願い出来ないですか?」
「わかりました。」
カレンさんはテキパキと、応接室を抑え、ギルド長の予定を確認し、ギルド長と面会予定だった何人かの人に話をして調整を行ってくれた。
・ ・ ・ ・ ・
応接室で、ギルド長と面会し、ココロが、これまでの経緯を説明してくれた。
・カースさんから、ギルドの印章の押されていない偽の依頼を勧められた事
・ダンジョンに入らなくても、普通に生えてる草を、
あえて、ダンジョンの奥地で採取して欲しいという依頼だった事
・依頼の場所では、獣と賊に囲まれたが、
賊と一緒になってカースさんが攻撃してきた事
・おそらく彼らが「初心者狩り」を行っていたと思われる事
・昨日捕縛してギルドに渡したハズの賊も、今日、治療されて再度襲ってきた事
・カースさんが「スキル」を奪える「特殊なナイフ」を所持していた事
「初心者狩り」の奴らも、同じナイフを持ってる者がいると思われる事。
・彼らが使っていた「特殊なナイフ」には「アクル・タマナ」の名前が刻印されており、
隣の「タマナ組」が、この件に関与している可能性があると思われる事。
・カースさんの「特殊なナイフ」だけ、こちらで押収している。
ギルドが、今回の後始末の為に、証拠として必要であれば提出する。
そして、今回捕縛した奴らを『無限収納』から取り出した。
まだ、生きていた。特に、息苦しい感じもないようだ。
今後『無限収納』を、ココロやユーマの緊急避難先として使う事も出来そうだ。
俺自身は『アーティファクト』を装備してる限り「無敵」だろうし…。「痛い」けど…。
今回、捕まえてくれたヤツらは、それぞれ、懸賞金が出ていた上に、
謎の「初心者狩り集団」についても、懸賞金が出ていたらしい。
カレンさんが、その辺の説明を、ココロに話していた。
昨日から参戦の「弱い初心者狩り」の奴らは、
全部で37人いて「特殊なナイフ」を持っていなかったが、
今日から参戦の「初心者狩り」の奴らは、
全部(カースさん含む)で16人で、全員が例の「特殊なナイフ」を持っていた。
証拠には、数本あればいいという話だったし、
お前らなら、それを持っていても大丈夫だろうと…言ってもらえた。
せっかくだから、全員分、持っておこうかと、
初心者狩りの奴らが持っていたものから、追加で2本回収しておいた。
例の「特殊なナイフ」には、アクル・タマナの名前と共に番号が刻まれていた。
カースさんから押収したものには、00999で、
今回、新たに押収した2本には、28946、03731という番号だった。
他の初心者狩りの奴らが持っていたものにも、それぞれ違う番号が刻まれていた。
シリアルナンバーみたいなものだろうか。一番大きな番号は、30020だった。
番号から察するに、同じようなナイフが3万本以上出回っている事になる。
その後、担当を変えて欲しいという話をした。
まぁ、こんな事をしたのだから「カース」さんは、ギルドにいられなくなるだろうし、
ほっといても担当が変わるだろうけど、次も、同じような素行の担当が付くのは勘弁してもらいたい。
「次の担当だが、こいつなら、納得してくれるか…」
と、カレンさんを指さした。
彼女は、最初に会った時から、誠実に対応してくれてるし、大丈夫だろう。
何より「組」との繋がりが強そうな感じもあり、今後の期待という意味でも、悪くない。
ココロは、俺とユーマの顔を見た。俺も、ユーマもココロに頷いた。
「はい、そうしてもらえるとうれしいです。」
「わかりました。改めましてカレン・ウルクと申します。これから、よろしくお願いします。
「初心者狩り」は、何年も前からギルドでも問題でした。解決に尽力頂き、ありがとうございます。
こういう実績があると、ランクアップとかしたりするんですが、
既にギルドの采配で上げられる最高ランクになので、特別報奨金が出せないか聞いてみます。
「組」へ紹介…を望まれていたようにも記憶していますが、
それには、もう少し、実績を積み重ねて頂く必要があるので、今あ、まだ、ご容赦ください。」
さすがカレンさん。わかってらっしゃる。至れり尽くせりだ。
その後、カレンさんに、今回ダンジョン内で狩って来たきた獣の素材の買い取りをお願いした。
今回も、使っていない倉庫で、獣をまるごと取り出して、素材鑑定チームの人たちを倉庫に呼んで…という流れで…。
・ ・ ・ ・ ・
その日、宿に帰る際、俺は、気になってた事をココロに聞いた。
「もしかして、俺たちも、人を殺してスキルを奪おう…とか考えてないよな?」
「そんな事、考えてないよ。考えてみてよ。
人を殺した時しか発揮されないなんて、条件が限定されすぎて、作るのが難しいと思わない?。」
「ん…、あぁ、確かに…。
「『世界の知識』で確認したけど、これは、スキル持ちの魔物を倒しても、スキルを奪う事が出来るんだ。
そして、ボクたちは、レベルアップの為に、魔物を倒している。
それなら、今後は、これでトドメをさすようにすれば、レベルアップだけでなく、スキルも手に入る。」
「なるほど…」
「但し、注意しておきたい事がある。
ナイフに刻まれた「銘」の事だ。「アクル」という名前に心当たりはない?。」
「確か、俺たちを轢き殺したヤツも、そんな名前だったな。」
「そう、まさに、それ!。
それが、この世界に、こんなものを持ってやって来ている。
しかも、その人、俺たちの事を逆恨みしてるらしい…。
俺たちがいなければ、神界を追放されなかったのに…とか思ってるみたいで…。」
「マジか…。」
「アクルは、このナイフで、間違いなくスキルを集めて強大な力をつけていると思う。
ボクたちは、それに、対抗出来るようになっておく必要がある。
だから、このナイフで、魔物を倒しスキル集めをしていきたいと思う。」
「そうだな…。」
「あぁ…。」
珍しく、ユーマが口を開いた。
「そして、アクルは、隣町にいる可能性が高い。姓がタマナになってるしね…。」
「いつ来てもおかしくない…という位置にいるって事だな。」
「うん。だから、今後、しばらくは、スキル集めを中心にしたレベル上げをしていくよ。」
「了解。」
俺が、そう言って、ココロと、ユーマの顔を見た。
ユーマは、無言で頷いた。ホントに、こいつって、寡黙な男だよな…。
・ ・ ・ ・ ・
翌日、ギルドに行くと、以前のキラーラビットなどの買取額が確定していたようで、
今回の懸賞金、特別報奨金などを加え、金貨204枚(2040万円相当)を受け取った。
前回の獣の買い取り(解体料金差引後)
・キラーラビット :金貨98枚(123匹分)
・デスラビット :金貨 2枚
・デッドファウナ :金貨16枚
・初心者狩り懸賞金:金貨30枚(人数不明の奴らだったので全員まとめての懸賞金)
・盗賊への懸賞金 :金貨58枚(37人分)
ちょっと興味があったので、魔銀貨や、魔金貨はないか聞いてみたが、ここには出回っていないという。
それと交換出来たとしても「ウルク外町」では、それを金貨に両替してくれるところもないので、
事実上、使う事が出来ないからおススメしないという。
尚、今回ダンジョンの中で倒して来た獣(複数種42匹分)の素材買い取りについては、
解体と査定に、日数がかかるとの事で、後日受取る事となった。
そして…
「ギルド長とお話して、特別に「C+」というランクを創設する事にしました。
今のギルドカードに、プラスの刻印と箔を加えるだけのものなので、簡素で申し訳ないですが、
今、ここでカードを更新出来ますので、カードを出してもらっていいでしょうか?」
「はい、ありがとうございます。」
こうして、俺たちは、C+という「特別ランク」に昇格する事になり、ギルドカードも、プラスという刻印がついたものになった。
当然、初めての事だし、こういうのがあると、組の方も…気にしてくれる事だろう。
俺たちは、色々なところから、興味をもたれる事になった。良い意味でも、悪い意味でも…。
「ウルク組」はもちろん、隣国の「タマナ組」に至るまで…
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「ウルク組」組長「ディーノ・ウルク」は、側近の何気ない話に食いついた。
「特別ランク?」
「あ…はい。外町でCランクの枠では収まらない規格外の冒険者が登場してきたとかで、新たにC+という特別ランクを新設したそうです。」
「一体そいつらは何をしたんだ?」
「C+クラスの獣100匹以上、Bクラス1匹、B+クラス1匹と討伐。
懸賞金が出ていた賊を53人、生きたまま捕縛…と聞いております。
それと、あの…。その担当に、カレン様が当たる事になったそうです。」
「ほぅ…。それは、1度、会ってみないとなぁ…。」
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「タマナ組」組長「アクル・タマナ」は、側近から、こんな報告を受けた。
「ウルクに特別ランクの冒険者が誕生したそうです。」
「どんなヤツらだ。」
「成人(この世界では15歳)になったかの3人組で、1人は背が高く強そう、1人は背が小さく…」
…と、伝わってきている情報を紹介していった。
それを聞いているうちに「アクル」は笑いを堪えきれなくなり、大笑いした。
探していたターゲットが、こんなにアッサリと、こんなに近くに、見つかったからだ…、
「あいつらが…。こんな近くに…。これは、計画を早めないといけないな…。」




