暗躍する者たち
隣国「マジカ帝国」の国境沿いに位置する「タマナ組」の法律は
・収入の3割を「税金」として納める
・収入がない者も年に銀貨5枚を「税金」として納める
・組内での「略奪」行為は禁止
・組長の「命令」は「絶対遵守」
・以上の法律を遵守出来ない者は「奴隷」とする
…というような事しか決められていない。
その為、
・財産を奪う「略奪」はダメだが「恐喝」「強姦」「監禁」「殺人」「詐欺」などは
「法律」で禁止されていない為、罪に問われない。
・「収入」の手段を奪って誰かを「奴隷」に落とす事も
「法律」で禁止されていない為、罪に問われない。
…という感じになり「法律」はあるけど、ザル過ぎて「ほぼ無法」という城塞都市である。
「税金」さえ納めれるなら、どんな者でも「組」に受け入れるので、
「タマナ組」には「ウルク組」のような「外町」というものはない。
だから「他の組」から追放された者が集まり、更に「無法」さが際立っていく。
「他の組」の者に「略奪」を行う事も「法律」で禁止されていない為、罪に問われない。
「タマナ組」に属していない通商キャラバンなどを襲撃したり、
近隣の城塞都市「ウルク」に戦争をしかける事も日常茶飯事となっている。
・ ・ ・ ・ ・
そんな「タマナ組」で、新しい組長が誕生した。名前を「アクル・タマナ」と言う。
「アクル」は元神様だったが、素行が悪く、全てのスキルを奪われて、この世界に落とされた。
「アクル」は神界から盗み出した「ロブナイフ」をいう特殊なナイフを所持していた。
そのナイフで相手を殺せば、相手の「スキル」と、
相手が生まれてから今までに蓄積してきた「蓄積経験値」を奪える効果があった。
それまで組長をしていた「ゴウダ・タマナ」は、かなり横暴な男だった。
しかし「人心掌握」というスキルを持っており、どんな無茶な命令でも皆を従わせる事が出来ていた。
「アクル」は、組長の屋敷に侵入し「ゴウダ」を殺し「人心掌握」というスキルを奪った。
「人心掌握」により「今日から俺が組長」という無茶な話なのに、誰も抵抗出来なかった。
組長となった「アクル」には、更なる野望があった。
この世界に転生した3人から、スキルを奪う事…である。
その為には、世界征服だってやってみるつもりだった。
しかし「アクル」には、時間がなかった。この世界に転生する際、老人の体で転生させられたからである。
この組を掌握したのも死ぬまでに、野望を達成する為の、第1歩にすぎない。
野望を達成する為に、もっと「スキル」を確保しなくては…。
そこで「アクル」は「タマナ組」の法律に「スキル所持者は組長に報告する事」という内容を付け足した。
その日から、連日、報告に訪れるものが殺到した。
「タマナ組」では、法律を遵守出来ない者は「奴隷」に落とされる事になっているからだ。
有用な「スキル」なら、それを奪う為に、殺されるとも知らずに…。
組長の「命令」は「絶対遵守」である上に、
「殺人」は「タマナ組」の「法律」で禁止されていない為、何人殺しても罪に問われないのだ。
こうして「アクル」は「スキル」と「蓄積経験値」を奪いながら「レベルアップ」を続けている。
・ ・ ・ ・ ・
しかし、予想に反し、有用なスキルというのは、なかなか集まらなかった。
そんな頃「クロノア」で作られた偽マジカ金貨が「タマナ組」で流通しはじめた。
「アクル・タマナ」は、偽金貨の見分け方に気づいた。
それどころか…偽造した人の名前が刻印されている金貨を堂々と使っている事に驚いた。
「アクル・タマナ」は、偽金貨の見分け方を組員に周知すると共に、組員を総動員し、刻印されている名前の主(偽造元)を捜索した。
その結果、金貨に書かれていた「ダイホ・ラフキン」の居場所の特定をする事が出来た。
「アクル・タマナ」は「リタ」という偽名を使い、豪遊中の「ダイホ・ラフキン」に近づいた。
そして、交友を重ね、親しくなってきたある日「リタ(偽名)」は、ダイホから、ワザとにお金を借りた。
その翌日「リタ(偽名)」は「ダイホ」に、こう言った。
「お前から借りた金貨が偽造品だとわかった。
偽物には、側面に小さく、お前の名前と、シリアルナンバーが刻印されてる。
こんな刻印は、オリジナルにはない。
俺が、それを見抜いたように、気づいたヤツは、すぐにお前のところに辿りつくぞ。
何と言っても、お前の名前が金貨に刻印されているのだから…。」
自分の名前とシリアルナンバーが刻印されていた事は「ダイホ」も、この時、初めて気づいた。
自分が手元に持っている「まだ使っていない偽金貨」で確認してみた。
ホントだ。確かに刻まれていた。1つづつ違う番号が刻印されていた。これにも、あれにも…。
そして、複製の時に使った「オリジナル」も確認したが、そこには、番号など刻印されていなかった。
何より、オリジナルに自分の名前が刻印されている「金貨」など、普通に考えても、ありえない。
「ダイホ」は、とても慌てた。
手元にある金貨のシリアルナンバーで、一番数字が大きいもので、3188になっており、
これから判断する限り、今まで自分が作った偽金貨は3188枚なのだろう。
偽物である事は絶対にバレないと思っていたのに…。
この男の言う通り「金貨の側面に注意」という情報が出回るだけで、すぐ偽物だとバレてしまうどころか、名前まで刻印されているので、間違いなく自分のところに辿り着いてしまうだろう。
これまで、偽金貨で、散々豪遊してきた事を、罪に問われるだろう。
ちゃんとした金貨で、損害賠償とか請求されても、絶対に払えない。
もしかして、刑務所から、一生でられなくなる?。
「ダイホ」の頭の中は、パニック状態に陥った。
心臓がバクバク音を立てている…。そう感じてしまうほど、パニックに陥った。
「リタ(偽名)」は優しい声で提案してきた。
「お前を責めてる訳じゃないんだ。
でも、友達として言わせてもらう。こんな事は、すぐに辞めないとヤバイ。
俺に「クロノア」を渡してくれたら、お前の代わりに元の持ち主に返しておく。
代わりに「ユグドラシル金貨」を500枚(5千万円相当)渡すから、
それを元手に、隣国の「ユグドラシル王国」に逃亡し、新たな仕事を探してはどうか?」
パニックに陥っていた「ダイホ」は、この救済提案に、全力で乗っかった。よく考えもせずに…。
冷静に考えれば、いろいろ、ツッコミどころ満載の提案だったのだが…
・なぜ、自分の代わりに持ち主に返すと言ってるのだろう…とか
・偶然出会って、バカ話をして盛り上がるだけの間柄で、
「リタ(偽名)」の事は、素性とか、何も知らないのに…とか
・会う約束すらしていないのに、
偶然会う事て、こんなに頻繁になるものなのか…とか
・この男にとって、自分が金貨偽造を辞める事が、
金貨200枚を出すメリットに相当するのか…とか
だけど、その時のダイホは、頭の中がパニック状態に陥っていて、そんな事を考える余裕がなかった。
こうして「クロノア」を「リタ(偽名)」に渡した。
「リタ(偽名)」は「ユグドラシル金貨」500枚(5千万円相当)を渡すだけでなく、
隣国「ユグドラシル王国」に逃亡する手助けもしてくれた。
「ユグドラシル王国」の「ウルク組外町」で、職に付けるように斡旋もしてくれた。
「ユグドラシル王国」に移住してからは、
「ダイホ・ラフキン」は「ホラフ・キーノ」という偽名を名乗るようになった。
移住の際、金貨500枚(5千万円相当)は、とても役に立った。
それが「クロノア」とは、別な方法で作られた偽金貨であるは知らず…。




