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『俺だけドロップ率∞のバグスキル持ちだった ~底辺探索者のダンジョン配信が、いつの間にか世界最強チャンネルになっていた~』  作者: やまご


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第85話 共存を壊しに来る者たち

夜の街は、いつもより静かだった。


人通りはある。灯りもある。

だが、空気の奥に張りつめたものがある。


見えない人間には分からない。

けれど俺たちには分かった。



「……近い」


アリアが言う。



俺も頷く。



“視線”が多い。



しかも、隠していない。



リゼが自販機の缶を開けながら顔をしかめる。


「嫌な感じ。堂々と来るつもりだ」



カイは端末を閉じた。


「港湾地区、地下鉄、通信障害。三点同時」



俺は息を吐く。


「……陽動ですね」



「本命は別にある」



その言葉が落ちた瞬間だった。



空が裂ける。



以前のような一点ではない。



街全体に、五つ。



同時に。



「……派手ね」


アリアが剣に手をかける。



裂け目から現れたのは、黒い観測者たち。


前回の三体とは比べ物にならない。


十体以上。



そして中央に、一体。



輪郭が濃い。



黒に金の線が走る、異質な個体。



圧が違う。



「排除執行官、到達」



声が響く。



リゼが顔をしかめた。


「名前からして面倒」



白い観測者も現れる。


だが、今回は単独ではない。

二体、三体。



「共存派、迎撃体制」



カイが短く言う。


「本格的に割れたな」




黒金の観測者――執行官がこちらを見る。



「対象:ユウト・カグラ」



「観測群へ持続的悪影響を確認」



「即時削除を開始する」



俺は肩をすくめた。


「物騒ですね」




次の瞬間。



街灯が消える。



音が消える。



色が消える。



世界が“無彩色”になる。



「領域展開型か」


カイの声だけが響く。



執行官が言う。



「この区域の可能性を閉鎖する」



意味はすぐに分かった。



逃げ道がない。


勝ち筋がない。


助かる未来が削られていく。



「……っ!」



見える“線”が次々と消える。



俺の干渉先も減っていく。



アリアが前に出る。



「ユウト、集中して」



「でも!」



「あなたは“見る役目”」



その言葉に、息を飲む。



彼女はもう突っ込んでいた。



ザンッ!!



黒い観測者二体をまとめて斬り飛ばす。



リゼも笑いながら跳ぶ。



「なら暴れる役やる!」



爆発的な蹴りで空間ごと叩き割る。



白い観測者たちも動く。



「局所解放」


「認識阻害」


「同期切断」



前より明らかに連携している。



俺は目を閉じる。



削られていく未来の線。

その中に、まだ細く残る一本。



執行官に繋がる“中枢線”。



「……あった」



俺は手を伸ばす。



存在干渉。



だが。



弾かれる。



「干渉個体の行動予測済み」



執行官が一歩踏み出す。



その瞬間、俺の周囲の空間が固まった。



動けない。



「ユウト!」



アリアが振り向く。



だが、その隙を黒い観測者が突く。



「くっ……!」



肩に浅い傷。



俺の中で、何かが切れた。



「……やめろ」



静かに言った。



その瞬間。



固定された空間に、ヒビが入る。



バキッ。



執行官が初めて止まる。



「……出力上昇確認」



俺は一歩踏み出した。



「俺に来るのはいい」



もう一歩。



「でも、あいつに触るな」



世界の見え方が変わる。



無数の線。


可能性。


削られた未来の残骸。



全部、掴める気がした。



アリアが小さく呟く。



「……また無茶する顔」




俺は笑う。



「信頼してください」




存在干渉――拡張。



“閉鎖された可能性”そのものに触れる。



消された未来を、再接続する。



一本。


二本。


十本。


百本。



街に色が戻る。


音が戻る。


逃げ道が生まれる。



執行官の輪郭が揺れた。



「……不可能」



「選択肢は、勝手に消させません」



その瞬間。



アリアが最短距離で踏み込む。



ザンッ!!!!!!



執行官の胸部に深い裂傷。



白い観測者たちが一斉に動く。



「排除執行官、機能低下確認」



「撤退勧告」



黒い観測者たちが揺れる。



統率が乱れた。



カイが逃さない。



「今だ」



衝撃波で裂け目ごと吹き飛ばす。



リゼが笑う。



「崩れた崩れた!」



執行官は後退しながら俺を見る。



「……危険度、更新」



「お前は感染ではない」



少しの間。



「変革因子だ」



そのまま、裂け目の奥へ消えた。



静寂。



街に灯りが戻る。


人々は何も知らず歩いている。



アリアが俺の前に立つ。



「肩」



見ると、いつの間にか俺も傷を負っていた。



「浅いです」



「うるさい」



そのまま額を軽く小突かれる。



リゼが笑う。



「はいはい、イチャつくの後で」



白い観測者がこちらを見る。



「記録更新」



「干渉個体の危険度、さらに上昇」



俺はため息をつく。



「味方側から言われるんですか、それ」



「事実だ」



カイが珍しく笑った。



「褒め言葉だな」



空にはまだ裂け目の痕が残っていた。



共存を壊しに来る者たち。

だが同時に、守ろうとする者たちもいる。



戦いは、もう個人のものじゃない。



世界の在り方そのものへ変わっていく。

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