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『俺だけドロップ率∞のバグスキル持ちだった ~底辺探索者のダンジョン配信が、いつの間にか世界最強チャンネルになっていた~』  作者: やまご


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第84話 観測者にも、割れる意志がある

夕暮れの街は、穏やかだった。


港湾地区での共闘から三日。

表向きには何も変わっていない。


だが、確実に空気は変わっていた。



観測者たちの“視線”が増えている。



以前のような一方的な監視ではない。

測るような、見定めるような気配。



「……増えましたね」


俺が空を見ながら言うと、アリアが短く頷いた。


「ええ。しかも質が違う」



カイが腕を組む。


「統一されていないな」



リゼがベンチで寝転がったまま言う。


「つまり仲悪いってこと?」



「その可能性は高い」




そのとき。



空気が静かに整う。



現れたのは、いつもの“観測者”。


白い外套のような輪郭。

以前より、かなり人型に近い。



「接触を要請」



俺は軽く手を上げる。


「どうも」



リゼが小声で呟く。


「すっかり常連」




観測者は俺を見る。



「状況共有を開始する」



「観測群内部に意見対立が発生」




沈黙。



リゼが起き上がる。


「マジで仲悪いんだ」




観測者は続ける。



「分類は二つ」



「共存容認派」



「排除継続派」




アリアが目を細める。


「分かりやすいわね」




俺は少し考える。



「……あなたは?」




観測者はわずかに間を置いた。



「現時点で、共存試験派」




リゼが吹き出す。


「中立気取ってる!」




観測者は無視した。




「問題は、排除継続派が独自行動を開始した」




その瞬間。



空気が冷える。




カイが一言。



「来るな」




次の瞬間。



空が裂けた。



以前のような静かな出現ではない。



“叩き割るように”。



荒々しく。




そこから現れたのは、三体。



同じ観測者。


だが、輪郭が鋭い。



白ではなく、黒に近い。



圧が違う。




「対象確認」



「干渉個体:ユウト・カグラ」



「異常観測個体:協調派」




リゼが顔をしかめる。


「言い方ひど」




黒い観測者の一体が前に出る。



「命令違反を確認」



「共存試験を終了する」




白い観測者が一歩前へ出る。



「却下」




空間が震える。



観測者同士の圧がぶつかる。




俺は息を吐く。



「……内戦ですか」




アリアが剣に手をかける。



「面倒ね」




黒い観測者が言う。



「人間は不確定要素」



「干渉個体は感染源」



「即時削除が最適」




その言葉に、少しだけ笑ってしまう。



「感染源って」




リゼが肩をすくめる。



「言われてるよ」




白い観測者が低く言う。



「訂正する」



「変化源だ」




一瞬、全員が止まる。



俺も。




「……それ、フォローですか?」




「事実の修正だ」




アリアが小さく笑った。




黒い観測者たちが同時に手を上げる。



「排除開始」




その瞬間。



街の時間が止まりかける。




観測による固定。



以前より強い。




だが。



白い観測者が前へ出る。



「局所解放」




固定が打ち消される。




カイが叫ぶ。



「今だ!」




全員が動く。




リゼが一体へ突撃する。



「内輪揉めに巻き込むな!」




アリアは最短距離で踏み込む。



ザンッ!!



黒い観測者が後退。




俺は“線”を見る。



三体の黒い観測者。



同期している。



思考も、行動も。



なら。



「繋がりを外す」




存在干渉。




三体のリンクに触れる。




「……干渉確認」




「排除優先度、更新」




「うるさい」



俺は押し込む。




線が切れる。




その瞬間。



三体の動きがズレた。




カイが逃さない。



「遅い」




衝撃波で一体を吹き飛ばす。




アリアが二体目へ。



ザンッ!!




リゼが三体目に蹴りを叩き込む。



「帰れ!」




混戦。



空間が歪む。



観測がぶつかり合う。




そのとき。



黒い観測者の一体が俺を見る。



「危険指定」



「最優先排除」




一直線に来る。




だが。



白い観測者が割り込んだ。



「却下」




衝撃。



二体が弾け飛ぶ。




俺は思わず言う。



「……助けました?」




白い観測者は振り向かない。



「共同契約中だ」




リゼが笑う。



「義理堅いじゃん」




数分後。



黒い観測者たちは後退した。



裂け目の向こうへ消える。



最後に声だけ残す。



「判断保留」



「だが、いずれ修正する」




静寂。




俺は空を見る。



「……敵、増えましたね」




白い観測者が答える。



「正確には、可視化された」




それは、少しだけ重い言葉だった。



元からいた敵意。

元からあった対立。



見えていなかっただけ。




アリアが俺の隣に立つ。



「どうするの?」




俺は少し考えて、笑う。



「いつも通りです」




「面倒なのを、一個ずつ」




リゼが親指を立てる。



「それでこそ」




白い観測者が小さく言う。



「……非効率」




俺は肩をすくめた。



「知ってます」




夕暮れの空には、まだ複数の視線が残っていた。



第4部。



共存は、戦いの終わりじゃない。



始まりだった。

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