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『俺だけドロップ率∞のバグスキル持ちだった ~底辺探索者のダンジョン配信が、いつの間にか世界最強チャンネルになっていた~』  作者: やまご


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第80話 観測する理由、選択する理由

夜の街は、静かに息をしていた。


歪みは消えた。完全ではないが、流れは戻っている。

人の営みは再び動き出し、事故現場も、やがて“日常”の中に埋もれていく。


だが――


空の奥にある“視線”だけは、消えていなかった。


「……まだいる」


俺は呟く。



アリアが隣に立つ。


「ええ」



短い返答。


だが、それで十分だった。



「……来るわね」



その言葉と同時に、空気が変わる。


圧ではない。

侵食でもない。



“整う”。



世界が、静かに“整列”する。



そして。



そこに、“現れる”。



今までのような曖昧な存在ではない。

輪郭を持った“何か”。


人型に近い。


だが、人ではない。



「……観測個体、接触」



声が響く。



今度は、逃げ場もなければ、敵意もない。



ただ――



“対話”。




リゼが小さく呟く。


「……珍しいパターン」



カイは一言。


「試されてるな」




“それ”が一歩前に出る。



空間が揺れる。



だが、崩れない。




「対象:ユウト・カグラ」




「分類:干渉個体 → 観測干渉個体へ更新」




俺は息を吐く。



「……長いですね、その名前」




一瞬。



沈黙。




そして。



「簡略化を許可」




「……観測者でいい」





俺は少しだけ笑う。




「分かりました」





“観測者”が続ける。




「問う」




その一言。




重い。




「なぜ、お前は“選ばない”」





核心。




俺は少しだけ考える。




答えはある。




だが。




言葉にするのは、初めてだ。




「……選ぶのは、本人でいいからです」





沈黙。




「非効率」




即答。




俺は苦笑する。




「そうでしょうね」





“観測者”は続ける。




「我々は最適を選ぶ」




「無駄を排除し、損失を最小化する」




「それが世界の安定に繋がる」





理屈は分かる。




完全に。




俺は頷く。




「正しいと思います」





リゼが少し驚く。




カイは黙っている。





だが。




「でも」




俺は続ける。




「それだと、“自分で選ぶ意味”がなくなる」





空気がわずかに揺れる。




“観測者”が止まる。





「意味」




その言葉。




理解していない。





俺はゆっくりと答える。




「間違えることも含めて、選ぶってことです」





「非合理」





「はい」





「損失」





「ありますね」





「……それでも?」





その問い。




核心。




俺は笑う。




「それでもです」





アリアが小さく言う。




「……らしいわね」





“観測者”は、しばらく沈黙する。




考えている。




初めて。





「……理解不能」




だが。




否定ではない。





「だが」




「確認した」





一歩、近づく。




空間がわずかに揺れる。




「お前は、安定を拒否する」




「だが、崩壊は望まない」





その通りだ。




俺は頷く。




「はい」





「矛盾」





「そうですね」





だが。




「それが人間なんで」





沈黙。




そして。




ほんのわずかに。




“観測者”の輪郭が揺れる。





「……興味深い」





初めて。




完全な否定でも、排除でもない。





「提案」





その言葉に、空気が変わる。




リゼが眉をひそめる。




カイが警戒する。





「共存」





その一言。





俺は目を細める。




「……どういう意味ですか」





“観測者”は答える。




「我々は観測し、最適化する」




「お前は干渉し、選択する」




「両立は可能」





つまり。




干渉を認める代わりに。




管理下に置く。





俺は少しだけ考える。




魅力的だ。




世界は安定する。




犠牲も減る。





だが。




「……やめときます」





即答。





リゼが吹き出す。




カイが小さく息を吐く。





“観測者”が問う。




「理由」





俺は答える。




「選ばされるのは違うんで」





沈黙。




だが。




今度は、否定しない。





「……了解」





“観測者”が一歩下がる。




空間が元に戻る。




「継続観測」




「干渉は許容範囲内」





それだけ言って。




消える。





静寂。




リゼが笑う。




「断るんだ、それ」




カイが言う。




「らしいな」





アリアが俺を見る。




「……後悔しない?」





俺は少しだけ考える。




そして。




「たぶん、します」





正直に。





だが。




「それでもいいです」





その言葉。




強い。





アリアが少しだけ笑う。




「……ほんとに」





手を握る。





第4部。




“選択と観測の共存”へ。





第80話 完


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