第65話(最終話・第2部完) 何度忘れても、君を選ぶ
「……不完全」
“それ”の声が響く。
崩れかけた世界の中心で。
それでもなお、存在は消えない。
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「お前は“思い出していない”」
「ゆえに――完成しない」
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空間が軋む。
まだ終わっていない。
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俺は息を吐く。
「……そうですか」
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隣。
アリア。
距離はゼロ。
手は繋がったまま。
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「……どうする?」
アリアが聞く。
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試す声じゃない。
確認でもない。
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“信じている”声。
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俺は少しだけ考える。
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そして。
笑う。
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「……簡単ですよ」
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“それ”を見る。
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「思い出す必要、ないです」
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沈黙。
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“それ”が止まる。
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「……矛盾」
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「記憶なき存在は、不完全」
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俺は首を振る。
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「違う」
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一歩踏み出す。
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「“今”で選べばいい」
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その瞬間。
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胸の奥が熱くなる。
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断片的な記憶。
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消えかけの感情。
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全部が。
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“今”に集まる。
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「……俺は」
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隣を見る。
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アリア。
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少しだけ驚いた顔。
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「何回でも選びます」
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はっきりと。
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その瞬間。
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アリアの目が揺れる。
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「……バカ」
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小さく。
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だが。
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嬉しそうに。
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そのまま。
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強く手を握る。
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「……なら」
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一歩近づく。
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ドン。
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完全密着。
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「一緒にやる」
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俺は頷く。
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「はい」
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“それ”が動く。
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「……論理破綻」
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「排除」
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全方位。
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“消去”。
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だが――
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俺は踏み込む。
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存在干渉。
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発動。
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だが。
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今回は違う。
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“書き換え”じゃない。
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「……繋ぐ」
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世界と。
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自分と。
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アリアと。
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すべてを。
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その瞬間。
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崩れていた空間が安定する。
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“それ”が止まる。
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「……干渉不可」
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俺は言う。
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「終わりです」
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アリア。
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最大速度。
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ザンッ!!!!!!!!!!!!
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完全直撃。
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“それ”の核。
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完全破壊。
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沈黙。
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そして――
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光となって。
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消える。
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静寂。
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世界が戻る。
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空。
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重力。
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音。
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すべて。
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元通り。
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俺は息を吐く。
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「……終わった」
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その瞬間。
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力が抜ける。
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「……っ」
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膝が崩れる。
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だが――
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支えられる。
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ドン。
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完全に。
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アリア。
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「……ほんとに」
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小さく。
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「無茶する」
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俺は苦笑する。
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「結果オーライです」
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その瞬間。
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アリアが少しだけ睨む。
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「軽い」
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だが――
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そのまま。
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離れない。
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しばらく。
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沈黙。
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風が吹く。
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そのとき。
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アリアが小さく言う。
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「……ね」
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「はい」
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「覚えてる?」
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少しだけ。
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期待。
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俺は考える。
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そして。
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首を振る。
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「……ごめんなさい」
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沈黙。
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だが。
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アリアは笑う。
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「……いい」
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小さく。
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「またやればいい」
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そして。
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少しだけ近づく。
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距離。
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ゼロ。
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「何回でも」
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真っ直ぐ。
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「好きって言う」
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俺は一瞬止まる。
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だが。
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すぐに笑う。
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「……じゃあ俺も」
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「何回でも好きになります」
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その瞬間。
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アリアがほんの少しだけ目を閉じる。
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そして――
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触れる。
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今度は。
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少しだけ長く。
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離れない。
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遠くで。
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リゼが呟く。
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「……それ最強だね」
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カイが一言。
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「崩れない」
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空は青い。
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世界は続く。
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記憶は。
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戻らないかもしれない。
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だが――
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それでも。
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何度でも。
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同じ場所から。
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始めればいい。
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手を繋いだまま。
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歩き出す。
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忘れても。
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また選べばいい。
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それだけで。
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十分だから。
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完(第2部 完結)




