第53話 目覚めた代償と、それでも離れない理由
「……やっぱり、来るわね」
夕方。
屋上。
空は赤く染まっている。
静か。
だが――
“何か”が近づいている。
俺は目を閉じる。
「……いますね」
前とは違う。
数じゃない。
質。
明らかに。
“格上”。
コメント欄(配信ON)。
「また来るのか」
「今度は本体?」
アリアが隣に立つ。
距離。
自然に近い。
肩が触れている。
「どこ?」
俺は答える。
「……上」
その瞬間――
空が裂けた。
音もなく。
静かに。
“開く”。
そこから――
一人。
降りてくる。
ゆっくりと。
圧。
今までとは。
完全に別次元。
コメント欄。
「やばい」
「ラスボス感」
男が着地する。
静かに。
そして。
俺を見る。
「……君か」
それだけ。
だが――
空気が支配される。
アリアが一歩前に出る。
だが。
今度は。
横。
並ぶ。
「……ここで止める」
低い声。
男は視線を向ける。
「止める?」
小さく笑う。
「無理だ」
一言。
その瞬間――
空間が沈む。
重圧。
膝が揺れる。
「……っ!」
今までの比じゃない。
立っているだけで限界。
コメント欄。
「重すぎる」
「動けない」
そのとき――
ぐいっ。
引かれる。
ドン。
密着。
完全に。
アリアが支える。
腕を回す。
「……立って」
近い。
かなり。
俺は息を整える。
「……いけます」
⸻
男が言う。
「無理をするな」
冷静。
「壊れるぞ」
その言葉。
核心。
俺は気づく。
「……そういうことか」
存在干渉。
万能じゃない。
“負荷”がある。
使えば使うほど。
削れる。
コメント欄。
「代償きた」
「バランス」
アリアが小さく言う。
「……やっぱり」
理解していた。
「無理しないで」
強く。
俺は頷く。
「はい」
だが――
目の前の敵。
それでも。
やるしかない。
⸻
男が一歩踏み出す。
「回収する」
それだけ。
その瞬間――
空間が“消える”。
「……!」
視界が飛ぶ。
足場がなくなる。
コメント欄。
「なにこれ」
「世界消えた?」
だが――
俺は立っている。
「……見える」
違う。
これは攻撃じゃない。
“書き換え”。
俺は手をかざす。
存在干渉。
発動。
「戻れ」
空間を引き戻す。
「……!」
世界が復元される。
コメント欄。
「やり返した」
「やばい」
男が少しだけ目を細める。
「……そこまで来たか」
認める。
⸻
その瞬間。
男が踏み込む。
速い。
完全に。
だが――
「分かる!」
俺が叫ぶ。
位置。
完全に把握。
「左!」
アリアが動く。
ザンッ!!
衝突。
だが。
弾かれる。
「っ……!」
初めて。
押される。
完全に。
格上。
⸻
そのとき。
俺は決める。
「……やります」
アリアが即座に言う。
「ダメ」
強く。
俺は答える。
「でも」
その瞬間。
アリアがさらに引き寄せる。
ドン。
完全密着。
顔が近い。
かなり。
「……一人でやらない」
はっきりと。
「一緒にやる」
その目。
揺れない。
俺は少しだけ笑う。
「……はい」
⸻
手を握る。
強く。
完全に。
繋がる。
「……これなら」
負荷。
分散。
軽くなる。
理解する。
「共有できる」
コメント欄。
「二人で使ってる?」
「やばい」
俺は空間を撫でる。
ズレを変える。
流れを変える。
男の攻撃。
逸れる。
「……!」
初めて。
明確に驚く。
「今!!」
アリア。
全力。
ザンッ!!!!!!
⸻
命中。
⸻
だが――
浅い。
男は微動だにしない。
「いい攻撃だ」
冷静。
「だが」
一歩踏み出す。
「足りない」
圧。
さらに上。
世界が軋む。
コメント欄。
「まだ上あるのか」
「終わらん」
⸻
俺は息を吐く。
「……きついですね」
正直に。
アリアが言う。
「ええ」
だが――
手は離さない。
「でも」
少しだけ目を細める。
「まだ終わってない」
確信。
俺は頷く。
「はい」
⸻
男が言う。
「面白い」
初めて。
少しだけ笑う。
「だが」
一言。
「今日はここまでだ」
撤退。
そのまま。
空へ。
消える。
⸻
静寂。
俺は膝をつく。
「……はぁ……」
限界。
その瞬間――
アリアが支える。
そして。
そのまま。
抱き寄せる。
完全に。
「……無理した」
低い声。
俺は苦笑する。
「少しだけ」
その瞬間。
アリアが額を寄せる。
軽く。
触れる。
「……ダメ」
小さく。
「無理しないで」
今までで一番。
優しい声。
⸻
俺は頷く。
「はい」
⸻
そのまま。
二人。
離れない。
夕焼けの中。
静かに。
⸻
だが――
戦いは終わらない。
むしろ。
ここからが本番。
⸻
そして。
その隣には。
もう。
迷いなく。
アリアがいた。
⸻
第53話 完




