第48話 環の外と、触れなくても分かる距離
「……来るわ」
夜。
静まり返った都市。
人気のない高層ビル屋上。
風。
冷たい。
だが――
空気が違う。
俺は目を閉じる。
「……いますね」
見える。
触れていないのに。
存在の位置。
ズレ。
全部。
コメント欄(配信ON)。
「もう感知してる」
「進化してる」
アリアが隣に立つ。
距離。
完全にゼロ。
肩が触れている。
自然に。
当たり前に。
「どこ?」
俺は答える。
「……三人」
「上と、後ろと」
「正面」
その瞬間。
空間が歪む。
「正解」
声。
現れる。
三人。
だが――
違う。
今までの敵とは。
“質”が。
完全に。
違う。
コメント欄。
「なんか違う」
「やばい」
中央の男が言う。
「初めまして」
落ち着いた声。
「アウト・サークル」
一言。
「執行者」
空気が凍る。
アリアが一歩前に出る。
だが――
今度は。
完全に隣。
守るだけじゃない。
「……ここで止める」
低い声。
だが。
揺れない。
男が笑う。
「止める?」
軽く。
「無理だよ」
圧。
一気に増す。
「……っ」
俺の体が重くなる。
存在そのものが押される感覚。
コメント欄。
「格が違う」
「やばい」
だが――
俺は踏みとどまる。
「……確かに強いですね」
正直に。
男は頷く。
「当然」
一歩踏み出す。
「君を回収しに来た」
その言葉。
完全に。
“対象”。
アリアの手が強くなる。
「……させない」
即答。
男が視線を向ける。
「君も対象だ」
一言。
「排除する」
その瞬間――
消える。
速い。
今までとは桁違い。
だが――
「見える」
俺が呟く。
完全に。
位置が分かる。
「右!」
アリアが即座に反応。
ザンッ!!
攻撃を弾く。
衝撃。
だが――
耐える。
コメント欄。
「読めてる!」
「まだいける」
男が少しだけ驚く。
「……なるほど」
「進んでるね」
次の瞬間。
もう一人が動く。
背後。
「っ!」
俺が振り向く。
だが――
間に合わない。
その瞬間。
ぐいっ。
引かれる。
ドン。
密着。
完全に。
アリアが抱き寄せる。
「……触らせない」
低い声。
完全防御。
コメント欄。
「守護MAX」
「でも今回は対等」
俺は言う。
「……ありがとうございます」
アリアが即答。
「当然」
だが――
そのまま離れない。
完全に。
くっついたまま。
⸻
三人目が動く。
「終わりだ」
空間が崩れる。
広範囲。
位相破壊。
今までとは違う。
“ルールそのもの”に干渉している。
コメント欄。
「世界操作してる?」
「やばい」
俺は理解する。
「……そういうことか」
存在干渉。
これは――
同じ領域。
俺は目を閉じる。
集中。
アリアが小さく言う。
「……やるの?」
俺は頷く。
「はい」
その瞬間。
手を握る。
強く。
アリアも握り返す。
完全に。
繋がる。
「……離れないで」
小さく。
だが。
いつもより。
柔らかい。
俺は答える。
「はい」
⸻
目を開く。
世界が違って見える。
「……触れなくてもいい」
呟く。
そのまま。
空間へ干渉。
ズレを修正。
「……!」
敵の動きが止まる。
コメント欄。
「なにした?」
「やばい」
中央の男が初めて驚く。
「……今のは」
理解する。
「干渉の上書きか」
俺は言う。
「そんな感じです」
その瞬間。
アリアが踏み込む。
ザンッ!!
命中。
一人撃破。
だが――
残り二人。
まだ余裕。
男が笑う。
「いいね」
「でも」
一歩下がる。
「今日はここまで」
撤退。
あっさりと。
「確認はできた」
その視線。
俺へ。
「君は――」
一言。
「“外側”に届いている」
意味深。
そして。
消える。
⸻
静寂。
風だけが残る。
俺は息を吐く。
「……なんとか」
アリアがすぐに寄る。
ドン。
密着。
完全に。
そして――
そのまま。
額が触れるくらい近い。
「……無事?」
小さく。
俺は笑う。
「はい」
その瞬間。
アリアがほんの少しだけ安心する。
「……よかった」
そして。
少しだけ。
そのまま。
離れない。
⸻
夜。
世界はさらに動く。
だが――
二人の距離は。
もう。
揺れない。
⸻
第48話 完




