第35話 逃がさない距離と、初めてのその先
「……ねえ」
夜。
施設の廊下。
静か。
人はいない。
「はい」
隣。
アリア。
いつもの距離。
腕。
絡んだまま。
だが――
今日は少し違う。
「さっきの」
小さく。
「続き、する?」
コメント欄(録画なし・オフ)。
※この回は非配信
空気が変わる。
俺は一瞬だけ言葉を失う。
「……本気ですか?」
アリアはちらっと見る。
「冗談に見える?」
即答。
強い。
だが。
耳。
少し赤い。
「……いや」
俺は苦笑する。
「見えないですね」
その瞬間。
アリアが一歩近づく。
距離。
さらに縮まる。
ドン。
壁。
逃げ場なし。
「……なら」
小さく。
「やるでしょ?」
完全に主導権。
だが――
目。
ほんの少しだけ揺れている。
俺は言う。
「……いいんですか?」
確認。
アリアは少しだけ目を細める。
「何が?」
「その……」
言葉を選ぶ。
「後悔しません?」
その瞬間。
アリアが固まる。
数秒。
そして。
小さく笑う。
「……するわけないでしょ」
そして。
一歩。
さらに寄る。
完全密着。
「むしろ」
「しなかったら後悔する」
小さく。
だが。
はっきり。
空気。
一気に変わる。
俺はゆっくりと手を伸ばす。
アリアの腰。
触れる。
ビクッ。
一瞬だけ反応。
だが。
逃げない。
むしろ。
そのまま。
少しだけ寄せてくる。
「……」
沈黙。
近い。
呼吸がかかる距離。
アリアが小さく言う。
「……遅い」
少しだけ不満そう。
「さっきから」
「ずっと待ってる」
完全に。
受け入れてる。
俺は少しだけ笑う。
「……分かりました」
そのまま。
ゆっくりと。
顔を近づける。
アリアの目。
閉じない。
じっと見てくる。
「……逃げないでよ」
最後の確認。
俺は答える。
「逃げません」
その瞬間。
アリアが目を閉じる。
そして――
キス。
触れる。
ほんの少し。
柔らかい。
温かい。
時間が止まる。
数秒。
ゆっくり離れる。
「……」
「……」
沈黙。
長い。
アリアがゆっくり目を開ける。
少しだけ。
ぼんやりしている。
そして。
小さく呟く。
「……」
「……思ったより」
間。
「……いい」
顔。
赤い。
だが。
すぐに視線を逸らす。
「……でも」
次の瞬間。
ぐいっ。
引き寄せられる。
再び密着。
「一回で終わりって思ってないわよね?」
低い声。
完全に戻った。
コメント欄(※もし配信なら爆発案件)
俺は苦笑する。
「思ってないです」
その瞬間。
アリアが少しだけ笑う。
「……ならいい」
そして。
今度は。
アリアから。
顔を近づけてくる。
キス。
さっきより長い。
少しだけ。
深く。
指。
自然に絡む。
服越しに伝わる体温。
離れる。
呼吸。
少し乱れる。
アリアが小さく言う。
「……ね」
「はい」
「これで」
少し間。
「完全に逃げられない」
冗談っぽく。
だが。
本気。
俺は笑う。
「最初から逃げる気ないですよ」
その瞬間。
アリアがほんの少し笑う。
「……知ってる」
そして。
そのまま。
肩に寄りかかる。
今までと同じ距離。
でも。
意味が違う。
完全に。
変わった。
「……ね」
小さく。
「明日からも」
「はい」
「ずっとこの距離だから」
宣言。
俺は頷く。
「いいですね」
その瞬間。
アリアが少しだけ笑う。
「……当然」
⸻
その頃。
別の場所。
リゼ。
モニター越しに何かを見ている。
「……あーあ」
小さく笑う。
「ついに行ったか」
だが。
表情は暗くない。
むしろ。
楽しそう。
「じゃあ」
「次はこっちも動くよ」
意味深に。
画面を閉じる。
⸻
廊下。
二人。
距離。
ゼロ。
手。
絡んだまま。
その距離は。
もう。
戻らない。




