第30話 揺らす視線と、壊しに来るやり方
「……なんか増えてません?」
街を歩きながら。
俺はスマホを見る。
同時接続。
120万人。
コメント欄(配信)。
「さっきのリング」
「拡散されてる」
「トレンド入り」
俺は苦笑する。
「やりすぎました?」
隣。
アリア。
変わらない距離。
指。
絡んだまま。
リング。
光っている。
「別に」
平然。
「見せてるだけ」
コメント欄。
「強すぎる」
「公開カップル」
そのとき――
通知。
ピロン。
画面に映る。
『緊急コラボ配信申請』
送信者。
リゼ。
コメント欄。
「きた」
「やばい」
俺はため息。
「出ます?」
アリアが一瞬だけ黙る。
そして。
「出る」
即答。
その目。
冷静。
「逃げない」
コメント欄。
「受けた」
「戦争」
⸻
配信接続。
画面に映る。
リゼ。
笑っている。
だが。
いつもと違う。
「やっと出てくれた」
コメント欄。
「対面」
「修羅場」
リゼは軽く手を振る。
「おめでと」
視線。
俺の指。
リング。
「それ」
一瞬。
空気が変わる。
アリアが答える。
「ありがと」
短く。
だが。
引かない。
コメント欄。
「バチバチ」
リゼが笑う。
「いいね」
「分かりやすい」
そして。
次の言葉。
「でもさ」
「それで終わりだと思ってる?」
コメント欄。
「来た」
「頭脳戦」
俺は言う。
「何する気ですか?」
リゼは笑う。
「簡単だよ」
指を立てる。
「ちょっとした企画」
画面が切り替わる。
表示される。
⸻
『世界配信ランキング戦
トップ争奪バトル』
⸻
コメント欄。
「は?」
「でかい」
リゼが言う。
「今、君たち1位でしょ?」
「だから」
「奪う」
ストレート。
「勝った方が」
「“最強配信者”確定」
そして。
一瞬。
間。
「ついでに」
「パートナーの価値もね」
コメント欄。
「うわ」
「えぐい」
空気が凍る。
アリアの手が。
わずかに強くなる。
俺の指。
絡んだまま。
「……乗るわ」
即答。
だが。
声は冷静。
リゼが笑う。
「さすが」
「逃げないね」
その瞬間。
リゼが少しだけ画面に近づく。
そして。
囁くように。
「ねえ」
「この勝負」
「勝ったらさ」
視線。
俺へ。
「もう一回選び直してよ」
コメント欄。
「」
「」
「やばい」
アリアの手。
ピクッと動く。
だが。
離さない。
むしろ。
強く握る。
「……必要ない」
低い声。
だが。
少しだけ。
感情が混ざる。
リゼは笑う。
「ほんとに?」
その瞬間。
コメント欄が流れる。
「揺れてる」
「効いてる」
俺は言う。
「その条件は飲めません」
はっきりと。
リゼが一瞬止まる。
「へぇ」
「ちゃんと言うんだ」
そして。
少しだけ笑う。
「いいよ」
「じゃあ別に」
「勝つだけ」
シンプル。
だが。
重い。
「3日後」
「同時配信」
「同じダンジョン」
「ドロップ勝負」
コメント欄。
「デカい」
「祭り」
アリアが言う。
「受ける」
即答。
迷いなし。
だが。
その手。
少しだけ強い。
俺はその手を軽く握り返す。
「大丈夫ですよ」
小さく。
アリアが一瞬だけこちらを見る。
そして。
ほんの少しだけ。
力が抜ける。
「……当然」
コメント欄。
「支えた」
「いい」
リゼはそれを見て。
ニヤッと笑う。
「いいね」
「ほんと」
「崩しがいある」
そして。
最後に。
一言。
「楽しみにしてる」
配信終了。
⸻
静寂。
街の音が戻る。
アリアはしばらく黙る。
そして。
小さく呟く。
「……面倒なの来たわね」
俺は苦笑する。
「まあでも」
「勝てばいいだけですよ」
その瞬間。
アリアがこちらを見る。
少しだけ。
柔らかい目。
「……そうね」
そして。
手を握り直す。
今度は。
しっかりと。
だが。
さっきより。
落ち着いている。
「負けない」
小さく。
「絶対に」
俺は頷く。
「はい」
そのまま。
二人で歩く。
距離は。
変わらない。
だが。
空気は変わった。
⸻
その裏で。
リゼ。
画面の前。
「……さて」
小さく笑う。
「壊す準備、できた」
その目。
完全に本気。




