第29話 近すぎる休日と、当たり前になった距離
「今日は休み」
ダンジョン前。
アリアが言い切る。
「え?」
俺は思わず聞き返す。
「配信は?」
アリアは肩をすくめる。
「するけど」
少し間。
「戦闘じゃない」
コメント欄(配信ON)。
「休み?」
「デート回きた」
「神」
俺は苦笑する。
「それ、視聴者的にどうなんですかね」
アリアは即答。
「見るでしょ」
コメント欄。
「見る」
「むしろこれ」
強い。
⸻
数分後。
街中。
休日の人混み。
そして――
「……近いですね」
俺が呟く。
アリア。
完全に腕を組んでいる。
密着。
逃げ場なし。
コメント欄。
「開幕これ」
「通常運転」
アリアは平然。
「普通でしょ」
「普通じゃないですよ」
即答。
その瞬間。
アリアが少しだけ顔を近づける。
「……嫌?」
耳元。
囁き。
コメント欄。
「きた」
「殺しに来てる」
俺はため息。
「嫌じゃないです」
正直に答える。
その瞬間。
アリアが小さく笑う。
「ならいい」
そして。
さらに。
ほんの少しだけ。
寄る。
コメント欄。
「距離更新」
「やばい」
俺は思う。
(これもう……完全に)
そのまま歩く。
店を回る。
雑貨。
服。
食べ物。
だが。
ずっと。
距離ゼロ。
「ねえ」
アリアが言う。
「これ」
指差す。
アクセサリー店。
「入るわよ」
⸻
店内。
静か。
落ち着いた空間。
だが――
「……やっぱり近いですね」
ソファに座る。
当然のように。
隣。
密着。
コメント欄。
「もう言うな」
「諦めろ」
アリアはちらっと見る。
「慣れて」
「慣れてますけど」
その瞬間。
アリアが手を取る。
指を絡める。
「ならいい」
自然。
完全に自然。
コメント欄。
「日常化」
「怖い」
店員が来る。
「ペアアクセサリーいかがですか?」
一瞬。
空気が止まる。
コメント欄。
「来た」
「イベント」
俺は苦笑する。
「いや、これは――」
その瞬間。
アリアが言う。
「見る」
即答。
強い。
コメント欄。
「確定」
数分後。
テーブル。
アクセサリー。
並ぶ。
アリアが一つ手に取る。
シンプルなリング。
「……これ」
小さく呟く。
そして。
ちらっと俺を見る。
「どう?」
距離。
近い。
かなり近い。
俺は答える。
「いいと思いますよ」
その瞬間。
アリアが少しだけ固まる。
「……そう」
そして。
店員に言う。
「これ」
即決。
コメント欄。
「はやい」
「覚悟」
俺は苦笑する。
「いいんですか?」
アリアは答える。
「いい」
そして。
小さく。
「意味も分かってるし」
コメント欄。
「」
「」
「確定」
購入。
店を出る。
外。
夕方。
少し静か。
アリアが止まる。
「手」
差し出してくる。
俺は出す。
そのまま。
指にリングを通される。
「……」
「……」
沈黙。
コメント欄。
「きた」
「プロポーズ?」
アリアは小さく言う。
「これで」
少し間。
「逃げられない」
冗談っぽい。
でも。
本気。
俺は笑う。
「逃げませんよ」
その瞬間。
アリアがほんの少しだけ笑う。
「……知ってる」
そして。
自分の指にも通す。
そのまま。
手を取る。
指が絡む。
リング同士が触れる。
「行くわよ」
その声。
少しだけ。
柔らかい。
コメント欄。
「神回」
「伝説」
⸻
そのとき。
遠く。
屋上の影。
リゼ。
無言で見ている。
「……へぇ」
小さく笑う。
だが。
目は真剣。
「そう来るんだ」
そして。
スマホを取り出す。
「じゃあ」
「こっちも本気出すか」
意味深に。
何かを操作する。
「距離じゃ勝てないなら」
「別のとこ攻めるよ」
不穏。
そのまま。
消える。
⸻
街。
二人。
距離。
ゼロ。
手。
繋がったまま。
リング。
光る。
関係は。
もう。
誰が見ても明らかだった。




