第23話 選ぶ前の距離と、言葉にならない気持ち
SSランクダンジョン、帰還ルート。
三人で並んで歩く。
だが――
空気は、重い。
コメント欄(配信)。
「きた」
「決着前」
「静かすぎる」
俺は小さく息を吐く。
「……さっきの続き、ですよね」
誰もすぐには答えない。
数秒。
沈黙。
最初に口を開いたのは――
リゼ。
「うん」
短い返事。
だが。
真剣。
「ちゃんと決めて」
歩みを止める。
振り向く。
まっすぐ。
俺を見る。
「中途半端、嫌いだから」
コメント欄。
「直球」
「本気」
アリアは少しだけ視線を落とす。
そして。
ゆっくりと。
俺の手を取る。
今度は。
強くもなく。
弱くもなく。
ただ――
離さないように。
「……」
無言。
だが。
伝わる。
コメント欄。
「言葉ないのが強い」
「本命」
俺は苦笑する。
「困りますね、これ」
リゼが言う。
「困らなくていい」
一歩。
近づく。
距離。
近い。
だが。
今回は違う。
無理に詰めない。
ただ。
真っ直ぐ。
「選ぶだけ」
アリアも言う。
「……そうね」
小さく。
だが。
はっきり。
「逃げないで」
コメント欄。
「挟まれた」
「ガチ」
俺は少し考える。
正直。
答えは――
もう出ている。
だが。
その前に。
一つだけ。
聞きたい。
「二人とも」
「なんでそこまでなんですか?」
リゼはすぐ答える。
「面白いから」
即答。
だが。
次の言葉。
少しだけトーンが変わる。
「それと」
「一緒にいて楽しい」
シンプル。
だが本気。
コメント欄。
「ストレート」
アリアは少しだけ黙る。
そして。
ゆっくりと。
口を開く。
「……最初は」
「興味だった」
視線を少し逸らす。
「でも」
一瞬。
止まる。
言葉を探すように。
「気づいたら」
小さく。
「……離れたくなかった」
コメント欄。
「来た」
「実質告白」
俺は少しだけ驚く。
アリアがここまで言うのは初めてだ。
そして。
視線が合う。
逃げない。
真っ直ぐ。
「……だから」
「選びなさい」
少しだけ。
震えている。
コメント欄。
「ガチ」
「ここで決まる」
俺は深く息を吸う。
そして。
一歩。
踏み出す。
向かう先は――
アリア。
「一緒にいたいのは」
「アリアさんです」
静寂。
数秒。
コメント欄。
「確定」
「きたあああ」
アリアが固まる。
完全に。
そして。
ゆっくりと。
顔を逸らす。
「……」
耳。
赤い。
そして。
小さく。
「……知ってた」
だが。
声は震えている。
リゼはしばらく黙る。
そして。
ふっと笑う。
「そっか」
一歩下がる。
だが。
目は死んでない。
むしろ――
強い。
「でもさ」
指を立てる。
「終わりじゃないよ?」
コメント欄。
「まだやる」
リゼは笑う。
「選ばれたからって」
「全部決まるわけじゃない」
そして。
俺を見る。
「これからも奪いに行く」
宣言。
アリアが即座に反応する。
「……やめなさい」
低い声。
だが。
今度は余裕がある。
リゼは笑う。
「やだ」
そのまま。
軽く手を振る。
「じゃあまたね」
去っていく。
静寂。
残されたのは。
俺とアリア。
コメント欄。
「二人きり」
「きた」
アリアはしばらく黙る。
そして。
ゆっくりと。
俺の手を握り直す。
今度は。
しっかりと。
指を絡める。
「……ね」
小さく。
「ほんとに」
「私でいいの?」
珍しい。
不安の声。
俺は笑う。
「いいですよ」
即答。
その瞬間。
アリアの表情が崩れる。
ほんの少しだけ。
柔らかく。
そして。
ぐいっ。
引き寄せられる。
ドン。
密着。
だが。
今までと違う。
強引じゃない。
ただ。
近くにいたい距離。
「……なら」
小さく。
「離さない」
そして。
そのまま。
軽く。
肩を預ける。
コメント欄。
「完全」
「付き合ってる」
俺は苦笑する。
「これ、もう配信してますけど」
アリアは少しだけ笑う。
「いいでしょ」
そして。
耳元で。
「見せつけるくらいで」
コメント欄。
「強い」
俺は思った。
(ああ、これ――)
(もうほぼ答え出てるな)
⸻
ダンジョン出口。
光。
現実へ戻る。
だが。
距離は。
もう。
離れる理由がなかった。




