第347話 北門の展望塔
皇城府の北門は、第1戦団本部のアクセス窓口でもあり、第1戦団専用の陸上港にも連絡している。
15時。
エリカと御堂は、北門に聳える第1戦団専用港を一望できる展望塔にいた。
「あ、第1戦団の旗艦『黒不死鳥』よ!」
第2戦団の『朱雀』と同型の三連型陸上戦艦である。掲げる戦団旗は、白地に黒い不死鳥を描いている第1戦団の旗だ。
旗艦『黒不死鳥』の中央デッキの天蓋が開く。陽光を浴びて白いジークフリード型重甲機兵が立ち上がる。通常のジークフリード型機体の白とは、若干違うパールホワイトの装甲を纏う機体だった。
「あれ! 21番機!」
エリカは、声が裏返るほどに燥いでいる。
「今日が21番機の調整テストの日だと聞いたから、絶対見学するつもりでいたんだよね」
「要するに……あたしの卒業祝いは、その『ついで』だったわけね」
そう思うと、卒業式前日に突然連絡して来たのが納得できる。まあ、エリカは整備兵であるので、特別な機体に関心を持つのは理解できる。しかし、ほんの少し寂しい気分になる御堂だった。
「GV3Xってさあ、凄い機体だったんだよ。ジークフリード型の設計を根本的に見直した、新しい設計主旨の機体だったの。13番機の試作機ってことは13番機も凄い機体に間違いないはず。50年前にあんな機体を造ってたんだよ」
興奮しているエリカは『ついで』を否定しない。いや、御堂の声が聞こえていないのかも知れない。
「あれは、13番機じゃなくて21番機でしょ」
「13番機は、50年前に21番機と平行して開発されたんだよ。従来のジークフリード型の設計を見直して、別々のアプローチで『最強の機体』を目指したんだって。21番機だって、従来型と違う機体だよ」
いつの間にか重甲機兵マニアに変わっていた友人に、御堂は少し引き気味になる。
「まあ、白椿の変からの帝専用機だそうだからね」
中央デッキに立ち上がったパールホワイトの重甲機兵は、通常のジークフリード型と比べると華奢に見える。
特徴的なのは、その背にある6枚の翼である。甲虫の背が跳ね上がるように一番上の翼が垂直に上がり、残る翼が横に伸びて広がった。
6枚の翼が淡く蒼白い光を灯すと、機体の周囲が7色に輝くように見えた。
次の瞬間、パールホワイトの機体は空に飛翔した。機体を追いかけて上に向けた視界から、その姿が消える。
「え?」
地面に砂塵が舞い上がり、パールホワイトの機体は地上にあった。
「……はや」
模擬戦で2番機の速さに翻弄された御堂だが、この21番機はそれを超える速さである。




