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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
卒業ーエピローグー

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345/349

第345話 囚人塔

 二人きりの卒業祝いから明けた朝。実際は、明け方近くになって眠りについたので、二人が目を覚ましたのは昼近くのことである。

 御堂は、エリカと共に皇城府の西門へ向かう。皇城府の西側には、俗に『囚人塔』と呼ばれる構造物がある。安全保障局により逮捕・判決を受けて罪人となった者が収容されている。その地下には「旧時代の都市の瓦礫から再利用可能な物資を回収する作業場」があって、囚人達はそこで強制労働させられている……との噂もある。

 ここに、第2戦団での御堂の指導官であった一樹いつきれんが収容されている。御堂は、この日に一樹への面会を予約していた。


「今更、一樹教官に会ってどうするのさ?」


「お世話になったのは間違いないんだし……一応、士官大学の卒業は報告しておきたいから……」


 御堂に付き添って来たエリカは、露骨に不快な顔になる。


「三軍合同演習で、イルドラ軍に情報を流してた人でしょう。それで貴女は、殺されるとこだったんだよ。恩義に感じる必要ないじゃん!」


「……ん」


 御堂は、またも返答できずに曖昧に言葉を濁す。一樹が「嫌な教官」であったなら、御堂も恨んでいただろう。しかし、御堂には一樹は「立派で、尊敬できる先輩」であった。今でも、一樹がスパイ行為をしていたとは信じられないでいる。



 直接の面会は許可されないので、モニター越しでの面会である。ユニットバスのような狭いブースに入ると、正面のモニターが点灯した。

 モニターに映る男を「一樹教官」と認識するのに数瞬の時間が必要だった。やや頬が痩けているが日焼けした肌が、妙に健康的にも見えた。


「久しぶりだね」


 先に声をかけて来たのは、一樹の方だった。


「御無沙汰してます」


 慌てて、御堂も挨拶を返した。モニターの中の一樹は、ドギマギしている御堂を見て小さく笑った。その笑顔に「やっぱり一樹教官だ」と、御堂は少しホッとできた。


「何か、あったのかい?」


「昨日、士官大学の卒業式でした。あたしも、卒業できました」


 そう言ってモニターの中の一樹に頭を下げた。その言葉に、一樹は少し驚いた顔をするが、御堂が顔を上げる前にいつも通りの笑顔に戻る。


「わざわざ、それを報告に来てくれたのかい。ありがとう、嬉しいよ」


 今度は、一樹が頭を下げた。御堂のお辞儀よりも、深くゆっくりとしたお辞儀だった。一樹が顔を上げても、暫し沈黙が続く。

 士官大学を卒業したが、御堂は近衛軍には正式配属されていない。それ以上、報告できることがないのだ。

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