第343話 見て見ぬフリ?
昼過ぎから始めた卒業祝いは、夕方頃には用意した料理の半分が二人の胃の中に消えていた。気心の知れた二人の会話は、アルコールで気が緩んでつい立ち入った話になる。
「え? 第3戦団に誘われたの!」
「……うん」
刀自古の付き添いで、第4戦団の旗艦『胡蝶』に押しかけたことをエリカに話した。
そこで日嗣皇子と『グリフォン』艦長の会談が急遽持ち上がり、更に南部方面軍による襲撃事件に遭遇したことも。
「B級ペルセウスの前に出て行って、必死に『停戦』の手信号を出してる馬鹿な人でさ。でも『戦いを止める』ために命かけてる人がいるって知れたのは、ちょっと嬉しかったんだよね」
第2戦団では、常に「戦いの先手を取る」ことを重要視していた。東城准将のように「戦いを避けること」を考える将校を、御堂は初めて見たような気がする。
「わたし、絶対に反対だからね」
エリカは即答だった。
「誘われただけだよ。別に、入団するって言ってないじゃん!」
確かに、まだ御堂は「入団する」とは言ってない。しかし、エリカには「御堂が、かなり傾いている」のがわかる。
「サクヤは、第2戦団から離れてるから知らないだろうけど、もう第3戦団と戦う気満々だよ。わたしはさ、サクヤと戦うことになるのは嫌だから!」
「でも。もしかしたら、戦わないで済む方法があるかも知れないじゃない? それなら、やってみるべきじゃないかな……って」
御堂は、刀自古にも語った「第3戦団自らが、南部方面軍とガルーダ部隊に厳罰を下す」のなら皇城府も納得するはず……と言う自分のイメージを、エリカに話してみた。しかし、それを聞いたエリカの反応は、刀自古よりもずっと冷めたものだった。
「子供の頃にさ」
野菜スティックを囓りなら、エリカはぼそりと呟いた。既にエリカの口は、アルコールにも油っぽい料理にも飽きている。
「直接にイジメをしなくても、イジメを見て見ぬフリをするのはイジメに加担しているのと同じ……って言われなかった?」
「うん、言われた」
エリカの問いの意図はわからないが、取り敢えず返事をする。油っこい料理に飽きていない御堂は、フライドポテトに手を伸ばした。
「中央本部は、ずっと南部方面軍の好き勝手を放置してたんだよ。結局は、その東城って人も中央本部も同じ穴のムジナで、今更厳罰なんて下せないよ」
「……ん」
エリカの例え話の意図が、何となくわかってきた。それに対して、反論の糸口を考えてみるが……。
「三軍合同演習を憶えてるよね?」
エリカは、別の話を持ち出してきた。




