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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
卒業ーエピローグー

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342/349

第342話 二人だけの卒業式

 士官大学の卒業式をキャンセルした御堂に、山根エリカから連絡が入る。

 山根エリカは第2戦団の整備兵で、旗艦『朱雀』では御堂の愛機であったGV3X(サンダーバード)を担当してくれていた。御堂には個人的に親しい友人の一人である。

 御堂の卒業を祝うために、休暇を取って首都・不死鳥ふしちょう京へ赴くと言う。卒業式をキャンセルして時間を持て余していた御堂は、二つ返事でエリカの来訪を受け入れる。


「ええ! 卒業式、すっぽかしちゃったの?」


「すっぽかしてないわよ。ちゃんと欠席を伝えて、卒業証書は実家に送付してもらうように手続きしてあるの!」


 実家が座間ざま領にある御堂は、卒業式に出るため、不死鳥京に短期滞在するつもりでホテルを確保していた。そのホテルの一室に、エリカと一緒に酒や料理を運び込む。

 エリカは小さな花束と、第2戦団の面々から預かってきた祝いの品を手渡した。整備班の興田おきた主任、いつの間にか兄貴分として頼ってしまった新藤しんどう中尉、前哨基地・医務室のクリステア軍医らの懐かしい名前に涙が滲みそうになる。


「へえ。第3戦団の中では、そう言う解釈だったんだ」


 御堂が、第3戦団に仮配属していた同期生から聞いた『情報操作』の件にはエリカも呆れる。


「でもさ。第3戦団に仮配属していた同期は、みんな卒業を保留されたんでしょう。卒業式では、顔を合わせないんじゃないの?」


「そうだけどさ。何か、スゴく気分が悪くなっちゃって」


 言われてみれば、エリカの言う通りである。少し「はやまった」かも知れないと後悔の気持ちも生まれる。


「相変わらず、扁桃体と脊椎反射だけで生きてるんだね」


 扁桃体とは、脳の中で感情を生み出す部位と言われている。そんな知識を有しない御堂だが、自身が悪口を言われていることだけは理解できる。


「デマでイタい女(・・・・)とか言われたら、気分悪いでしょうが!」


「疫病神より、イタい女の方がマシかも知れないよ。少なくとも、嫁の貰い手はありそうじゃん?」


「誰が、やく……」


 否定しようとして、思わず言葉に詰まってしまう。嵯峨さが州議事堂包囲戦での間抜け行為(ボーンヘッド)は、御堂は明らかに疫病神でしかなかったのだから。

 応急的に作られた棺の中で、首から上を失っていたネロの遺体が脳裏によみがえる。

『……こうなってしまいますから』

 そして、夢の中に現れたネロが、自身の首を両手に持って呟く声も聞こえた気がした。


「あ……ごめん」


 沈み込む御堂に気付いたエリカが、思わず謝罪を口にする。

 暫しの沈黙の後、気分を変えた二人は持ち込んだワインの栓を抜く。

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