第341話 イタい女?
御堂を含めた三人は、場所をレストランに移して積もる話を続けていた。
「第2戦団の空気は、早くから内戦一色だったぞ。ナーガオウ州で日嗣皇子が合流した時には『北部方面軍は一番遠くにいるから、駆けつけられない』と悔しがっていた」
「その噂、マジに信じてたのかよ。日嗣皇子が合流したなんてデマだよ。第3戦団の中央本部の調べだと、第1戦団の陸上戦艦が一隻参戦していただけだぜ」
(ああ、そうか)
(日嗣皇子出陣がデマだったら……)
(叛逆したことも有耶無耶にできるね)
(そう言うふうに情報操作してるんだ)
「え、デマだったのか? おい、御堂はナーガオウ州に行ったんだよな」
話を振られた御堂は「うん」と頷く。
「日嗣皇子専用機の11番機はいたよ。金縁の黒不死鳥の紋章もあったし」
「はあ? 嘘だろ」
「あたし。11番機の命令で、ガルーダ部隊のA級ジークフリードと一騎打ちにも応じたからね」
「まさか……B級でA級を倒しました、とか言わねえよな?」
「倒したよ。トドメを刺したのは11番機だけど、あたしが追い詰めたからって撃破は譲ってくれたの」
「おい。ナーガオウ州議事堂包囲戦で『B級でA級を撃破した』ってホラ吹いてる女がいるって聞いたけど、お前かよ。嘘もホドホドにしろよな。ガルーダ部隊は、ナーガオウ州議事堂包囲戦にA級ジークフリードを持っていってなかったんだぞ。どうやって、無い機体と戦うんだよ」
(え? 2機持って来てたじゃん)
(第2戦団のB級に負けたら格好悪いけどさ)
(リアルタイムで放送していたはずだよ)
(あ、後で加工した映像にすり替えてるんだ)
(繰り返し流せば、記憶も上書きできるし)
会話の噛み合わない三人の雰囲気は次第に悪くなる。最初は、再会を期して夕刻に酒が飲める店に繰り出す予定だったが、夕刻前に解散することになった。
一人になった御堂は時間を確認した。
16時だった。この時間であれば士官大学の事務局はまだ開いている。同期生との雰囲気が悪くなったことで、明日の卒業式に出る気が失せてしまった。卒業証書は、実家に送付されるようにしておけばいい。
事務局に戻って卒業証書を送付して貰う手配をした後、ふと一人になって考えた。
「あたしって……西方域では『B級でA級機体を倒した、とかホラ話をしているイタい女』だったりするのかなぁ」
馬鹿は諦めて自認しているが、ホラ話をするイタい女は避けたい。
刀自古の耳に入ったら、さぞ面白がるだろう。射流鹿だったら……「気にするな」と意外と優しい言葉をくれそうな気がした。




