第340話 正反対?
御堂は、刀自古に謝罪することを心に決めながらも、それを果たせないでいた。
本庄郷領から不死鳥京へ戻った翌日に、安全保障局に連絡を入れたが「既に異動している」との返事だった。
異動先は機密に触れるための、外部の人間には教えて貰えない。
「昨日の今日で、異動なんてあるはずないじゃん! まだ機嫌直してないわけ‼」
さすがに「本当に急な異動」が、月夜見の我が儘で実行されたのを知らない御堂は「器と胸の小さい女」に腹が立ってくる。
そして、士官大学の卒業式の日が迫る。
卒業式の前日、御堂は士官大学の事務局に出向いた。「入鹿玲」と言う士官候補生の消息を確認するためだ。
事務局の回答は「局地戦で戦死」であった。
刀自古が最初に言った通りである。日嗣皇子の存在を隠すために創られた『入鹿玲』の存在は、記録の上では戦死で処理されたのだ。
「入鹿玲の『人生』は……これで終わったんだね」
S33中継基地にいたのは『入鹿玲』ではなく、日嗣皇子である『羅侯射流鹿』だったのだ。さすがに、馬鹿を自認する御堂でも、これらの事柄は口外不問とすることなのは察せられる。
士官大学の構内で偶然、二人の同期生と再会した。
一人は、第3戦団に仮配属していたが、一連の騒動で士官大学の呼び出しに応じて戻って来たが卒業を保留されたままになっている。
もう一人は、第2戦団北部方面軍に仮配属していた。同じ第2戦団でも、本隊にいた御堂は全く顔合わせの機会はなかった。
当然の如く、卒業後の進路の話になる。意外なことに卒業を保留されている者が、一番楽観的な展望を持っていた。
「いくら皇城府でも、第3戦団を本格的に敵にできないさ。『帝の敵』とか圧力をかけて、第3戦団が折れるのを待っている。皇城府と言えど、どこかで和解するしかないはずさ」
「そうなのか?」
「俺は第3戦団に仮配属していたからわかるんだよ。西方域の外殻都市は、皇城府や帝を信頼してるのではなく第3戦団を信頼してるんだ。第3戦団をぶっ壊したら、帝国は西方域をまとめきれなくなるぜ」
「ふーん」
「皇城府と第3戦団が和解すれば、俺らの仮配属の実績も復活するだろ。時期は多少ずれても卒業は必ずできるさ。で、卒業後は第3戦団に入団だ」
「俺は、内戦になりそうだからと第2戦団への任官を辞退したんだ。帝国外勢力と戦うのは覚悟していたけど、第3戦団とは戦いたくない。実は、結構身内が第3戦団にいるんだよ」
「辞退したのか。勿体ねえな、内戦になんかならねえよ」
同期二人の見解は、正反対だった。




