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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
卒業ーエピローグー

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338/349

第338話 異動の辞令

 御堂を見捨てて、本庄郷ほんじょうごう領から不死鳥京へ戻った刀自古は、その足で安全保障局本部に赴いた。既に夕方で、定時の終業時間は迫っているが気になっていることがある。

 急に御堂の面接をキャンセルしたのである。月夜見が何か言ってきている可能性は高い。何を言って来るにしろ、揚げ足を取られないために直ちに対応しなければならない。

 机の上に、一通の封筒が置かれていた。


「異動の辞令って……何これ?」


 行政官として『第4戦団に派遣』される旨の一文が書かれた辞令……そして。


「統括司令副官(・・)の秘書官?」


 第4戦団統括司令官の秘書……ではなく、その副官の秘書だと言う。更に、異動日時は「即時」と書かれていた。



 帝国の東方域を守護する第2戦団は煉獄峡要塞を本部にしていたが、守護域を持たないとされる第4戦団は、皇城府に本部を置く。同じく皇城府に本部を置く第1戦団本部の一部を間借りするような形で、第4戦団の本部は設置されている。

 辞令を受け取った刀自古は、そのまま第4戦団本部に向かう。安全保障局本部も皇城府にあるので、徒歩で異動できる距離だった。


「まったく……何で副官に秘書が必要なのよ。あの人に必要なのは、生活介護士でしょうが!」


 電子レンジの設定もできないくせに、どうやって重甲機兵のSVとして複雑なハードウェアを制御しているのかは謎だ。


「重甲機兵って、実は電子レンジより簡単に制御できるのかも知れないわね」


 皮肉を呟いてから、射流鹿専用機である11番機のSVを月夜見がやっているのを思い出す。日嗣皇子は大丈夫だろうか、と思わず心配になってしまった。

 そう言えば。

 ごく短い期間だったが、射流鹿にはGV3X(サンダーバード)のSVを務めさせた。生来の体質で重甲機兵との和合率の低い射流鹿をSVとすることで「その、軍事的天才を活かす」術を月夜見は考えていたのかも知れない。


「……CRを選ぶ『人を見る目』があれば、良かったのに」


 月夜見の「他人の才能を見る目は確かだが、人を見る目は怪しい」特質のせいで、射流鹿にも遠回りをさせてしまったのかも知れない。

 刀自古は、そんな風に思っている。



 第4戦団の統括司令官室を見て、刀自古は唖然とした。煉獄峡要塞にあった第2戦団統括司令官室と全く同じ調度品が、全く同じ配置で並んでいる。


「第2戦団統括司令官室をそのまま持って来たのね」


 この『統括司令官室』は、表札が『統括司令副官室』に変えられて隣に新たに統括司令官室が作られるのだろう。

 そして、ここで月夜見の生活介護をする自分の姿を想像して、ため息をつく。

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