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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第九章

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336/349

第336話 テロリズムの賛同者

「腐敗した人間の……矛盾する行動とは、興味深いものですね」


 刀自古の口角が吊り上げる。本当に面白がって笑っているように、御堂には感じられた。ちょうど、そのタイミングでアメリカンコーヒーが届いた。刀自古の、カフェのウエイトレスに会釈をする笑顔と、第3戦団を嘲笑する笑顔は全く同じに見えた。


「最初は『都市を戦火に晒したくない』との気持ちから反帝派との取引にも応じたのかも知れません。でも、反帝派との取引で私腹を肥やす(・・・・・・)うちに性根も腐ります。腐敗した人間は、手にした利権を手放すよりも破滅を選択します。守るべき都市だって、自らの手で火の海にするでしょう」


「私腹を肥やす……って、どうやって?」


「装備や弾薬の横流し、傭兵や業者への斡旋や口利き……近衛軍人が、その気になればいくらでもお金儲けの手口はありますよ」


 ナーガオウ州議事堂包囲戦の後で、噂話として囁かれていた。

 南部方面軍は20機の重甲機兵を持つと言われたが、実際は12機しか参戦しなかった。それは「横流しで格納庫が空だったに違いない」と。


「でも! その中にだって、本当に、本気で『戦いを止めよう』とする人だっているんです!」


 自分の身の危険も省みずに、B級ペルセウスの前に出て『停戦』を呼びかけていた東城准将の愚直さを、御堂は思い出していた。


「腐敗した組織の中で出世できるのは、腐敗した人間だけですよ」


「でも!」


 食い下がろうとする御堂を無視するように、刀自古は静かにアメリカンコーヒーを口に運ぶ。純朴な御堂には、ドロドロとした舞台裏は理解し難いのだろう。

 面倒と感じつつも、仕方ないと諦めて、もう少しだけ付き合うことにする。


「反帝派を支援しているのは帝国外勢力です。帝国の都市が火の海になるのは、実は『帝国を弱体化させる』と言う意味で利益(・・)なのです」


「でも……反帝派の人達自身は、元々の帝国民ですよね? 帝国民同士で話し合えれば、お互いの妥協点も見つかるかも知れないじゃないですか」


 コーヒーカップを握る刀自古の右手が止まる。数瞬の後、御堂は顔面を襲った熱気に目を閉じた。コーヒーの香ばしい香りが全身を包む。

 刀自古の飲みかけのコーヒーは、御堂の顔に向けてぶちまけられていた。


「……え?」


 コーヒーを顔面に浴びせられた御堂は、刀自古の行動の意味がわからず困惑する。


「先帝を誅殺し、今も日嗣皇子暗殺を企てる……テロによって『事を成そうとする者』との協議に応じるのは、テロに屈することですよ。貴女が、テロリズムの賛同者とは、見損ないました」

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