第332話 御堂の直感
刀自古は、届いたアメリカンコーヒーにも手をつけない。御堂の正面に座ったまま、腕を組んているだけだった。それでも、御堂の直感が「問題の本質を外していない」ことに感心している。
ルージュピーク演習場で『第2戦団に敵対した南部方面軍を討伐せよ』との帝の詔を受けながら『ガルーダ部隊が、ナーガオウ州議事堂包囲戦で南部方面軍に与した』ことを皇城府は重く受け止めている。
皇城府の判断は『南部方面軍は日嗣皇子暗殺を企てた』のであり、それに与したガルーダ部隊も『日嗣皇子暗殺』計画の共犯者である。
「第3戦団では、ガルーダ部隊の指揮官だった藤崎准将が少将に昇進していますね。第3戦団としては、ガルーダ部隊は適切に任務を全うしたと判断しているようです」
「え……ええ?」
明確な造反行為を取ったガルーダ部隊で、その指揮官が昇進している意味がわからない。
「月夜見様の降格によって、近衛軍には女性の将軍がいなくなりました。どうやら……近衛軍唯一の女性将軍として広告塔にしているようです。まあ、一応美人のようですから」
月夜見と比べたら美人には見えない程度の美貌であるが・・・月夜見の素顔を知る者は限られるから通用するかも知れない。
「……はあ」
さすがに、御堂も呆れていた。
「この藤崎少将は、南部方面軍に在籍していた経歴があります。そして、当時から南部方面軍司令官の黒田准将の愛人との噂もあります」
刀自古は「噂」と言ったが、安全保障局なら噂の真偽も調べはついているはずである。その上で言うのだから推して知るべしである。
「あの……何で、そんな人にガルーダ部隊を預けたんですかね」
「穏便に話をまとめさせるつもりだったのでしょうね」
第3戦団統括司令官の周防崎大将は、良く言えば「情に厚い」上官である。情の通じた者同士で、折り合いをつけ、体面を整えてくれることを期待したのだろう。
「そう言う事情ですから、第3戦団が南部方面軍とガルーダ部隊を切り捨てる事は有り得ないと思います」
射流鹿の気質であれば、今回の南部方面軍の奇襲攻撃を『星間協定に反する卑劣な戦闘行為』として『無制限かついかなる法にも縛られない』報復を実行するのは明らかだ。
煮え切らない態度を執り続ける第3戦団が『日嗣皇子暗殺を企てた』共犯者として、第4戦団のみならず第1戦団と第2戦団からも袋叩きに遭って崩壊して行くのは、容易に想像できる。
そして。
「帝国西方域の外殻都市は、火の海になるでしょうね」
そうするために、敢えて第3戦団を自由にさせいるのだ。




