第331話 追加注文
刀自古に問われて、思わず不用意な言葉を口にしてしまったことに気付く。照れ隠しのために、卓上のタブレットから「砂糖入りのブラックコーヒー」を追加で注文した。
「相楽行政官も、何か追加しますか。ココアにしますか?」
「何でココアなんですか?」
結局、刀自古はアメリカンコーヒーを追加する。
追加注文した飲み物が届くまで、暫しの間二人は沈黙する。刀自古がココアに反応しなかったことで、御堂は少しだけ気が晴れたように感じていた。
卓上に届いた砂糖入りのブラックコーヒーを一口だけ、御堂は啜った。
「南部方面軍とガルーダ部隊の叛意は明らかです。それは、あたし自身が肌で感じました」
コーヒーカップを置き、両の拳を膝において、御堂は背筋を伸ばした。
「南部方面軍とガルーダ部隊は、罰せられないといけません。第3戦団が自らの手で、それを果たせれば、皇城府だって和解に応じて『帝の敵』を撤回すると思うんです」
帝国の首都・不死鳥京には、ガルーダ部隊から離反した戦艦『蒼天』の幹部13名が保護されている。
彼らの証言では、ガルーダ部隊の叛逆は藤崎司令官の一存だったことになっている。一方で、太后のように「第3戦団そのものの叛逆」として処理したがっている一派もある。
射流鹿も、太后と同じ考えである。
「だから、貴女が第3戦団に入団して、中から南部方面軍とガルーダ部隊を罰するように仕向ける……と言うのですか?」
「……」
声には出さないが、御堂は力強く頷いて見せた。
「無理です」
「どうして?」
思わず大声になる御堂に対して、刀自古は平静だった。その理由を説明しようと言う素振りもない。その態度に、自分が小馬鹿にされたと感じられてムッとする御堂。
「第3戦団にも、東城准将のように『本気で戦いを止めよう』としている人がいるんです。統括司令官の周防崎大将だって、そう思うから帝への親書をしたためたんじゃないですか?」
「戦いを止めたいのは本当でしょう。でも、彼らは、身内を処断することはできません。結局、何もしないと同じです」
「え……それじゃあ」
御堂には、刀自古が言わんとする意味が理解できない。御堂の、口を開けたままの間の抜けた顔を見た刀自古が、ため息をつく。
「第3戦団は、身内を罰するよりも、皇城府と戦うことを選ぶでしょう。覚悟を持って戦うわけではありません。ズルズルと決断を先延ばしにするうちに、抜き差しならない状況になリますよ」
その説明が、更に御堂を混乱させる。




