第330話 戦わない選択肢
「あの! 要注意って、どう言う意味なんでしょうか?」
御堂の問いに、刀自古は少し考える素振りを示した。
「それに答える前に……貴女が、東城准将にどんな印象を持ったのか、を教えて下さい」
「あたしは……」
格納庫脇での状況を思い返してみれば、東城准将の行動はあまりにも軽率だった。敵味方の区別なく停戦を呼びかけて、あまつさえ、殺意剥き出しの敵機の前に身を晒す。あの殺意に気付けなかったのなら、相当に鈍感だと言う他ない。
「とても軽率な人だと思いました。でも……必死に戦闘を止めようとする熱意は本物だと感じました」
「そうですか」
ラインゴルドが仲介を務めたのは、東城准将に『悪意がない』と判断してのことだろう。しかし、南部方面軍の襲撃を呼び込んだのも「東城准将の軽率さ」である。
「東城准将自身は、悪人ではないかも知れません。しかし、彼は『悪人に利用されやすい人間』であると言えます。結果として、彼は悪事や不正の要となり得ます」
けれど……刀自古の分析は、御堂には納得できない部分があった。
「でも、それなら……しっかりしたサポート役が付いていれば、大丈夫なんじゃありませんか? 東城准将の傍で、厳しく悪事や不正を見定めて処分を下せる人がいれば!」
「そんな人は、第3戦団にはいませんよ」
刀自古は、即座に否定する。それは、一切の迷いも躊躇もない断定である。
「……」
容赦のない断定に、御堂は完全に言葉を失う。そんな御堂を見る刀自古は、小さくため息を漏らして口調を変える。
「最初の話に戻りますが、どうやって『皇城府と第3戦団の戦い』を止めるのですか?」
「……それは」
御堂もナーガオウ州議事堂包囲戦に参加した。その際に、南部方面軍やガルーダ部隊の悪意を肌で感じ取っている。ビーム束の流れ弾がビル街に及ばないように、敢えて、的になりながら戦ったのは御堂自身である。
南部方面軍とガルーダ部隊の『都市への被害を最小に抑えるための、緊急的な対応』は嘘だと確信している。あれは「悪意を持って日嗣皇子を狙った軍事行動」だった。
都市への被害が比較的大きくならなかったのは『日嗣皇子が積極的に攻勢に出た』ために、早期に南部方面軍とガルーダ部隊が戦力を失ったからである。
「玲は……戦わない選択肢を、選ばないんです。戦って、敵対する者を叩き潰すことしかしない。あたしが傍にいるだけでは、玲を止められないんです」
「どう言う意味でしょうか?」
御堂の言葉の意味が、刀自古には理解できなかった。




