第329話 第3戦団に入団すること
……帝国の内乱を止めたい。
その、御堂の言葉に潜む違和感を見逃さない程度に、刀自古は御堂の性格を知っていた。話の方向を変えてみることにする。
「第3戦団に在籍する者は、帝国直轄領では叛逆者として指名手配されています。これから入団する者も例外ではありません」
第3戦団に入団する者は、帝国直轄領では「叛逆者として指名手配」される。それは、御堂も知っている。
「貴女の故郷である座間領は直轄領です。二度と里帰りできなくなりますね。それに、叛逆者を身内に持つご家族は、安全保障局の監視対象になります」
家族の件を出されて、御堂は肩をすくめる。どうやら、そこまで考えてはいなかったらしい。
「ご家族だけではなく、友人や知人もそうなります。今の貴女の、衝動的な勢いだけで、決めて良い選択ではありませんよ」
御堂が言葉に詰まっている間に、刀自古はカフェの電話を借りて『第3戦団中央本部の東城賢治准将』の経歴を安全保障局に問い合わせた。
数分後に、暗号化されたファイルが刀自古の携帯端末にメールで届く。平文に変換された情報を読み取って、刀自古は少なからず合点がいく。
東城賢治准将。
良く言えば「部下から信頼の厚い上官」である。無骨であるが、部下の失敗に寛容で情が厚いと第3戦団内部では評されている。
御堂の気質なら、好感を抱きそうな人物だ。
しかし。
安全保障局では、要注意のマークがつけられている。
彼が艦長である『グリフォン』に関わる会計や武器装備の報告書類には、差戻しや修正が異様に多い。
「近衛軍が、安全保障局から秘書官や行政官を受け入れるのは慣例です。妾も、第2戦団に月夜見様の秘書として派遣されていました」
不意に、別の話を振られた御堂は困惑する。「はあ」と返事だけは返したが、その口を閉じられないでいる。
「安全保障局と近衛軍は相互に監視し合うことで、内部の不正を抑止し、また早期の摘発を図ります。ですが、第3戦団は安全保障局から派遣を一切受け入れていません」
それは御堂も知っている。第3戦団は、安全保障局からの干渉がない分、規律が比較的緩い。士官大学の仮配属希望者が多いのは、規律の緩さも理由の一つだった。
「東城准将は、安全保障局が『要注意』としてマークしている中の一人です」
「え?」
「彼自身が不正に手を染めているのか、人の良さで『部下の不正』を見逃しているのかは判断できません。しかし、無闇に信用するのは危険ですよ」
刀自古の指摘は、御堂にとって後頭部を強打された如き衝撃だった。




