第326話 東城准将への評価
ラインゴルドが捕囚していた戦艦『グリフォン』の搭乗員は、第3戦団戦力圏に送り届けられてた。
第4戦団旗艦『胡蝶』に来訪したベルーナは、それらの報告を月夜見に伝える。
「カイザーもやっと肩の荷を降ろせたな」
旗艦『胡蝶』は未だにS33中継基地に停泊している。損傷を受けたA級0061機の修理を、ラインゴルドが引き受けたので、その作業が終わるのを待っているのだ。
「はい。何とか……」
ベルーナは煮え切らない返事をする。東城准将は「人は良い」のだが、身内に対して甘く身内以外の他者に責任転嫁する傾向が強い人間だった。
「今回の会談に際した襲撃事件も『ラインゴルドの過度の武力誇示が、南部方面軍を刺激ためである』と、東城准将はカイザーを批難しています。南部方面軍からS33中継基地が受けた損害に対する保障には、第3戦団中央本部は応じないと思われます」
「あれだけ用意周到な奇襲攻撃を『つい、うっかり』で済ませるとは、第3戦団の規律は想像を超えたものだな」
ベルーナと月夜見が会話している場に、射流鹿がパウチ容器に入った飲み物を持って来た。立場の上では、月夜見は射流鹿の副官である。しかし、射流鹿の師匠的存在あるために、普段から射流鹿が月夜見を立てているらしい。
「S33中継基地の受けた損害に関しては、第1戦団が費用と賠償金を建て替えます。嵯峨州は、外殻都市ではありますが皇城府に対して好意的な対応をしている都市です。皇城府としては『嵯峨州に不利益を押しつけてはならない』と判断してくれました」
「ありがとうございます」
ベルーナは、射流鹿の言葉に胸を撫で下ろす。これでカイザーも一応は安心するだろうと思う。
カイザーも当初は、南部方面軍から「人の良さ」に付け込まれる東城准将には同情的だったが、その「本性」を垣間見るに人物評を180度変えた。
「嵯峨州が、かつて南部方面軍の蛮行によって不利益を被ったことは同情する。しかし、それはあくまで第3戦団あるいは南部方面軍の一部に『はみ出し者』による行為である。我ら第3戦団は、身内からはみ出し者を生み出したことを反省せねばならない。しかし、嵯峨州とて『真摯な第3戦団兵士』を正しく寛容に評価すべきである。今回の悲劇は、不寛容な被害者意識が招いた自業自得の結果ではなかったか」
生き残った重甲機兵パイロットを、眼前で処刑されたことに対しての憤りもあるのだろう。しかし、仮にも軍人の立場にある者が、民間施設への攻撃を『自業自得』としたことには、カイザーは失望した。




