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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第九章

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323/349

第323話 任務の失敗

 A級0061(ジークフリード)機は、格納庫の脇でへたり込んでいる。戦斧の激しい殴打によって、背面のバックパックは壊され主推進機関(バーニア)に故障を生じ、腰部バランサーもエラーを回復できないでいた。その状態では、自力で『胡蝶』へ帰艦できない。

 その機械眼球が、発着路の南側で行われていた会談の場所に向いていた。

 自らを盾として庇った東城准将が、日嗣皇子との会談を行っている様子を確認した御堂は、一つの仕事をやり遂げた気がする。

 しかし、Cユニットのメインスクリーンに映る映像は、御堂の心をザワつかせる。


「……まさか!」


 青い軍服を着ている男の立ち姿に見覚えがあった。男の、風になびく長い髪にも。



 2機のB級ジークフリードが近づく。その2機に左右から支えられて、A級0061(ジークフリード)機はようやく上体を起こす。胸部装甲が展開して、迫り出したコクピットからワイヤーを伝って青柳と御堂が地上に降りて来た。

 御堂が上半身裸であることに気付いたラインゴルド兵が、大急ぎでジャケットを用意してくれる。それを受け取った御堂は、ジャケットを羽織りながら駆け出していた。


「御堂准尉! どこに行くんですかぁ!」


 青柳の声が聞こえたが、返事をしている余裕はない。とにかく、会談をしている場所へ行って、確かめないと気が済まなかった。



 日嗣皇子の背中を遮るように立ち塞がるカイザーを、東城准将はさも当たり前に退けようとする。しかし、カイザーはその場を譲らなかった。


「まだ、肝心の用件が果たされていないではないか」


 親書を渡すために設けられた会談の場である。日嗣皇子に、親書が渡っていないのだから「会談は終わっていない」と東城准将は解釈している。


「会談の時間は10分間と確認したはずです。その10分間に、肝心の用件とやらを果たすかどうかは、仲介者たるラインゴルドの関与することではありません」


「何だと?」


 カイザーを見る、東城准将の顔が気色ばむ。

 ここまでだ……柳沢大佐は、これ以上の交渉を東城准将に任せることを無理だと判断した。


「准将。我が『グリフォン』の、残る60名の一般兵を第3戦団勢力圏へ送還するにはラインゴルドの力を借りるしかありません。ここでは、ラインゴルドの不評を買うのを避けて下さい」


 柳沢大佐は、東城准将の耳元へ顔を近づけ小声で提案する。60名の一般兵と言われて、東城准将は渋々ながら納得する。


「了解した。迷惑のかけついでと言うことで……60名の一般兵の送還をラインゴルドにお願いできるか?」


 東城准将の依頼に、カイザーが黙って頷いた。

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