第318話 会談の場で
生存者の処刑を終えたB級ジークフリードは、11番機を守るように取り囲んだ。11番機のコクピットから、パイロットスーツの月夜見が降りて来て、射流鹿の側に向かうのが見えた。
射流鹿と月夜見が揃うタイミングを見計らい、カイザーが歩み寄った。
「この度は、大変ご面倒をおかけしました」
この場の警備は、ラインゴルドの責任である。それが、会談のために招いた日嗣皇子自らを戦いに参加させてしまった。しかも、日嗣皇子の第1戦団への根回しと11番機の活躍がなければ、勝利はなかったかも知れない。
「いや。ラインゴルドからの適切な情報提供のおかげだ」
頭を下げていたカイザーが、月夜見が声に顔を上げる。
仮面を付けた月夜見の顔が、カイザーの後方に向いていた。仮面によって目元が隠れているため、その視線は読めない。しかし、東城准将と柳沢大佐を見ていると察せられた。
「予定は大幅にズレましたが、会談を行うことでよろしいでしょうか?」
「ラインゴルドの金儲けに協力すると約束した。ラインゴルドが金を受け取ったのなら、お互いに約束を果たそうではないか」
仮面で見えないが不機嫌ではなさそうだ。月夜見にとっては、この戦闘は予測の範囲内であったらしい。
「ありがとうございます」
月夜見に礼を言ってから、カイザーは東城准将と柳沢大佐の元へ戻る。
「念を押しておきますが、約束の時間は10分です。それでは、参りましょう」
「おい、待て!」
東城准将の声は聞こえたが、カイザーは無視して先に立って歩く。
日嗣皇子と月夜見が立っている場所には、つい数分前に処刑された南部方面軍パイロットの死体が放置され、そのままになっている。
そして……日嗣皇子の足下には、左胸を軍刀で貫かれた大崎中佐が俯せの状態で倒れている。大崎中佐の生死を案じてのことだとわかっていたが、それをカイザーが答える必要はない。
「第4戦団統括司令・羅侯射流鹿少将と副官の有馬月夜見大佐です」
東城准将と柳沢大佐に、射流鹿と月夜見が紹介された。
しかし、東城准将の耳にはカイザーの声は届いていない。日嗣皇子の足下に倒れている大崎中佐に駆け寄って、脈を確認していた。
既に、大崎中佐に脈はない。その場で目を伏せ、短く黙祷する。
大崎中佐の死を確認した東城准将が立ち上がる。それを待っていたカイザーが、東城准将と柳沢大佐を射流鹿と月夜見に紹介した。
「第3戦団中央本部所属の戦艦『グリフォン』艦長・東城賢治准将と副官も柳沢真大佐です」
この時点で、東城准将の頭には血が上りかけていた。




