第315話 報復
東城准将は、7名の生存者を見る。第3戦団の緑のパイロットスーツを着用しているのは、大崎中佐と佐藤大尉の2名だけである。他の者は、他国製のパイロットスーツに所属を示す戦団章すら付けていない。
……大崎中佐が、独断で帝国外勢力を伴い「襲撃を画策した」のではないか?
……南部方面軍は、この会談の成功を本気で望んでいたのではないか?
東城准将はそう考えていた。今、この場で大崎中佐を詰問し「全て自分の独断である」と白状させることが、最善の策だと思えた。
「冷静に対処して下さい。この状況では、周防崎統括司令の親書すら『日嗣皇子暗殺のために用意された』ものと解釈されるかも知れないのです!」
東城准将の前に立ち塞がったのは、柳沢大佐だけではなかった。部下の下級兵士の中からも、柳沢大佐を守るように東城准将を制しようとする者が現れた。
複数人の手に身体を抑えられて、ようやく東城准将も考え直すことができた。
……この場で大崎中佐が嘘の証言をしたら、どうなる?
第3戦団中央本部を『日嗣皇子暗殺』の共犯者にする絶好の機会でもあるのだ。そうなったら、取り返しのつかないことになる。
7名の生存者を取り囲むように、第4戦団のB級ジークフリード3機が発着路に移動してきた。ラインゴルドの白兵戦部隊の兵士も、7名と距離を取ってB級ジークフリードの脚下まで後退する。
少し離れた地点で11番機が膝をつき、機体を屈める。胸部装甲が展開し、迫り出したコクピット部から青い軍服の将校がワイヤーを伝って降りてきた。
「日嗣皇子か」
東城准将は、青い軍服の人影が少し前に見た男と同一人物だと確認した。
肩までの長い髪が、赤い荒野から吹く風になびいている。日嗣皇子は、7名の生存者の方へ歩いて行った。
「我々は、あそこへ行かないのか?」
東城准将は、カイザーに問う。
「無制限かついかなる法の制約を受けない報復を執行するのは第4戦団です」
カイザーの回答に、東城准将は目を丸くする。
「待て。この戦闘が、星間協定に違反する『卑劣な戦闘行為』と決まったわけではない!」
「中立的な会談に戦闘行為は禁止されています。先に攻撃を仕掛けたのは南部方面軍ですから、星間協定に違反したのは明白です」
「それは……ラインゴルドが過度の警備態勢を取ることで、大崎たちを刺激したからだ。責任の一端は貴官にもある!」
カイザーは敢えて返事をしなかった。
柳沢大佐が再び前に立って、カイザーに詰め寄ろうとする東城准将を制するのを横目で見ているだけだった。




