第312話 カイザー機:決着
射流鹿は、11番機からカイザー機の戦闘を観測していた。
「あの、A級ペルセウスの機体から所属はわかりますか?」
天然ゼナ・クリスタルを骨格にするA級重甲機兵はオーダーメイドに近い。素材とするゼナ・クリスタルに素体構造や装甲を合わせるため機体ごとに差違が生じる。
過去に実戦に出た機体であれば、情報収集されてデータベースに蓄積されているはずだ。
「あるにはあるが、3年前に大破したことになっているな」
「大破……ですか?」
「大破して『捨てられていた機体を拾い上げてレストアした』と言われれば、それ以上の追求はできない……かも知れないな」
月夜見の声には笑いが籠もっている。口にはするが、信じていないのは明白だ。
『ペルセウス型A級重甲機兵機』
『PX6型式識別番号2105』
コンソールに流れた機体の記録を、射流鹿も流し見する。
「アルメニア軍と第3戦団との戦闘で大破したことになっていますね。戦ったのは、南部方面軍ですか」
大破したことにして非合法な作戦に運用をしていた可能性は高い。南部方面軍は「3年前から帝国外勢力と取引をしていた」と射流鹿は解釈した。
空中移送機発着路の北側で展開していた、カイザー機とA級ペルセウスの戦いは最終の局面を迎えていた。
周辺環境の情報を収集するセンサーを失い、左腕も動かなくなったA級ペルセウスには、既に勝機は失われている。せめて対峙しているA級機体を道連れにするのが背一杯である。
それは、カイザーも予測している。メインモニターの中央で、突進してくるA級ペルセウスに意識と神経を集中させた。
カイザー機が、打刀を機体の正面で構える。膝と腰を沈めて機体の弾機を溜めると同時に、脚部と腰部の副推進機関が点火して機体を浮かせた。
「!」
A級ペルセウスの右腕が伸びて、握られたロングソードの切っ先が、カイザー機の腹部目がけて突き上げられる!
刹那、カイザー機の機体から流れる光粒子が上に向かって帯を作る。
膝の弾機と最大出力の副推進機関を使って、カイザー機は真上に飛翔した。
A級ペルセウスが突き上げたロングソードは、空を切っていた。
「終わりだ!」
カイザー機が地上に降りたときには、A級ペルセウスは突進の勢い余って背中を見せていた。副推進機関で滑空しながら、カイザー機に向き直ろうとするも、その不安定な体勢をカイザー機は逃さなかった。
A級ペルセウスの鳩尾部から、胸部奥のコクピットに向かって打刀で抉る。
A級ペルセウスのZCF機関が強制停止して、乾いた金属を響かせる。




