第311話 カイザー機:優勢
重甲機兵の頭部には各種センサーが集中している。そして、精密なセンサー類は衝撃と熱に弱い。先ほどの足蹴りは、A級ペルセウスの顔面を衝撃で砕くと共に、脚部の副推進装置で高熱も浴びせていた。
カイザーの思惑通りなら、センサーの一部がエラーを起こしているはずだ。多少とも、戦いを有利に運ぶ布石は打ったはずである。
メインモニターのA級ペルセウスも、カイザー機と同じように右肩に寄せた剣を、垂直に立てて構えた。
バックパックから、矢継ぎ早に撃ち出していた信号弾も止まった。
「そっちも、やっと集中する気になってくれたかい」
カイザーは、口の中で小さく呟く。そして。
カイザー機の右脚が、再び大地を蹴った。今度は、一気に副推進装置と主推進装置を最大出力で突進する。
ガチン!
カイザー機の肩部装甲が、A級ペルセウスの剣の柄と激突した。
ジークフリード型重甲機兵は、ペルセウス型重甲機兵より華奢で機体重量も軽い。それでいて推進装置の出力は、ジークフリード型重甲機兵の方が高い。最大出力で突進してくるカイザー機に、A級ペルセウスは剣を振るえなかった。
A級ペルセウスは、剣の柄を握る両手で、カイザー機の肩部装甲を押し、カイザー機は肩でそれを押し返す。
「主推進装置、出力70パーセント。まだ上げられます!」
「不意に引かれて、勢いでつんのめったら面倒だ。五分で押し返していればいい」
「了解です」
2機の重甲機兵は、芝生の上で鋼の機体をぶつけ合っていた。しかし、A級ペルセウスが垂直に構えた剣は、カイザー機の左肩部装甲が抑えている。一方、カイザー機の剣は自由に動かせる。
カイザー機の左腕が打刀の柄から離れた。打刀を握る右手が後ろに引かれ、切っ先が真っ直ぐA級ペルセウスの胸部に向く。
……A級ペルセウスが小さく痙攣した!
カイザー機の右手が打刀を突き出すのと、A級ペルセウスが後方へ機体を滑らせるのは同時だった。しかし、打刀の切っ先は、A級ペルセウスの胸部、左腕装甲版の隙間に突き刺さり、機体の素体構造を損傷させる。
A級ペルセウスは、打刀の間合いの外に逃げた。しかし、その左腕がダラリと下がる。
「A級ペルセウス、左肩部の素体構造を破壊しました。左腕は動かないはずです。降伏を勧告しますか?」
「その必要はない」
このA級ペルセウスのパイロットは、降伏勧告を受け入れることはないだろう。そして、おそらく捨て身で最後の攻撃を仕掛けてくる。
「来るぞ。これで終わりにする!」
A級ペルセウスの背中と腰、脚が目映く発光した。




