第308話 射流鹿の思惑
カイザー機と交戦中のA級ペルセウスは、戦いながらも信号弾を撃ち上げて他のB級ペルセウスに号令を発していた。
戦局が傾いてしまった今、B級ペルセウスへの使命は「A級0061機の破壊」から「東城准将の口封じ」に指示は切り替わる。
11番機の機械眼球が、格納庫の前で押し合う2機の重甲騎兵に向いた。
Cユニットのメインモニターで、中央にB級ペルセウスの背中が映る。主推進機関最大出力にして向かえば、背面バックパックからコクピットまでを太刀で貫けるかも知れない。
「B級ペルセウスの手並みを拝見しましょうか」
そう言うと、射流鹿は格納庫へ向かう脚を止めた。
「東城准将を見殺しにするつもりか?」
「南部方面だけをどうこうするより、第3戦団全体を叛逆者とした方が対応は簡単です。星間協定の定める『無制限かついかなる法の制約を受けない』報復として行動するなら、帝国が混乱する前に第3戦団を殲滅できます」
ナーガオウ州議事堂包囲戦の際に、GV3Xに破れたA級0067機のパイロットから「周防崎統括司令が背後にいる」との証言は取ってある。
射流鹿は、第3戦団とそれに与する西方域を焦土化するつもりだ……月夜見は思った。
東城准将は必死だった。今、このS33中継基地で行われている戦闘行為を何としても収めなければならない。
南部方面軍が『日嗣皇子暗殺』を成功させれば、再び「赤椿の変」の混乱を繰り返してしまう。南部方面軍が撃破されたら『日嗣皇子暗殺』を企てた叛逆の責を第3戦団は負わねばならない。南部方面軍の幹部のみならず、第3戦団中央本部にも責を問われる者が出るだろう。
双方に矛を収めさせ、ここでの戦闘行為は「無かった」ことにしなければならない。
A級ジークフリードが支える手楯の上から、B級ペルセウスの頭部が覗く。ペルセウスの機械眼球は、東城准将を追いかけている。
東城准将は、身体の向きをペルセウスの方へ向けて軍服の所属章と階級章を指差す。それから『停戦せよ』のサインをゆっくりと大きく示した。
B級ペルセウスの右腕が、手楯をこじ開けるように引き倒し東城准将に伸ばされた。頭上に伸びる鋼の右手に、日の光を遮られる。
(押しつぶされる!)
迫ってくる鋼の右手に、東城准将はハッキリとした殺意を感じた。最初の対人レーザーによる射撃も、間違いではなく狙ったモノだったのだと理解する。
「馬鹿な! 何故、俺を殺そうとするのだ?」
東城准将の身体を押しつぶそうとした鋼の右手は、別方向から伸びた鋼の右手によって退けられる。




