第306話 停戦せよ?
格納庫の非常用扉を開けて外へ出た直後、東城准将の目に入ったのは重甲機兵同士の戦闘だった。数十メートル先で、17メートルの鋼の巨人が戦う光景に愕然とする東城准将だったが、更に驚愕すべきことが起こる。
B級ペルセウスの機械眼球が自身に向く。その機械の視線には、直感的に敵意……いや殺意が感じられたのだ。
恐怖に全身が強張る。
突然、轟音と共に地面が揺れて視界が塞がれた。巨大な鋼板が眼前に現れて、その向こう側での炸裂音……少ししてから、熱気に全身が包まれる。
ジークフリード型重甲機兵が、手にしていた巨大な楯で自分を庇ってくれたのだ。レーザー砲の射撃が、手楯を急激に加熱する。手楯の裏側に、生身で立つ東城准将は流れる熱風に蹌踉めきかけた。
(第3戦団の同士であるはずの機体が、俺を撃ったのか?)
混乱しつつも、東城准将は冷静に状況を整理しようと務めた。
手楯装備の大型楯は、幅7メートル、高さ15メートルの長方形である。軽く腰を屈めた姿勢なら重甲機兵の全身を楯に隠せる。
しかし。A級0061機は、東城准将を庇うために、楯を横倒しにして片膝をついた姿勢となっていた。頭上がガラ空きとなって、上からいくらでも斬り付けられる。
実際、頭部を狙ってロングソードが何度も振り下ろされていた。それを、御堂の直感が最小の損傷に留めているのだ。
(早く、格納庫のシェルターに戻ってよ!)
メインモニターに映る人影に向かって、御堂は叫びたかった。
「戦艦『グリフォン』艦長に告げる! 直ちにシェルターに戻りなさい!」
外部スピーカーをオンにして、青柳は東城准将に呼びかけた。東城准将は、自身が特定されて呼びかけられたことに一瞬たじろぐ。しかし、東城准将はその場に留まりA級0061機の機械眼球に向かって両手でサインを作った。
『停戦せよ』
しかし、この状況で第2戦団から停戦の信号弾は撃てるはずがない。
「シェルターに戻りなさい!」
温厚で冷静なはずの青柳も、さすがに声が裏返る。
11番機のコクピットで、月夜見は青柳の声を拾っていた。
「戦艦『グリフォン』の艦長だと?」
射流鹿に会談を申し入れてきた、中央本部に所属する東城准将であることを思い出す。
「そして、その東城准将をB級ペルセウスが対人レーザー砲で撃ったのか」
なるほど……と、月夜見は口角を吊り上げた。カイザーによれば、東城准将は「純朴に日嗣皇子との会談を望んでいる」と言うことだった。
「南部方面軍による騙し討ちを証言する、生き証人だな」




