第305話 動物的直感
A級0061機は、巨大な手楯を縦に構えて、その後ろに機体を隠していた。その、縦に構えていた手楯を横にして、格納庫の非常口を覆った。
「!」
B級ペルセウスの胸部から放たれた対人レーザーを、手楯を横倒しにして間一髪で止めたのだ。
人間の反射速度が、レーザー光線の速度に優るはずはない。非常口から出てきた人影とB級ペルセウスの挙動から、本能的に「B級ペルセウスが、非常口から出てきた人間を狙う」と察したのである。
御堂の動物的な直感と反射神経は、やはり群を抜いている……Sユニットで青柳は感心した。しかし。
「御堂准尉! 何をやってるんですか?!」
非常口から出てきた人間を庇うために、手楯を横倒しにしたために、A級0061機の腰から上が無防備に晒されることになったのだ。
B級ペルセウスは、再びロングソードを振り上げた。
ペルセウス型重甲機兵が装備するロングソードは、ジークフリード型重甲機兵の打刀に比べて斬撃は大きくない。切れ味よりも、剣の重さによる衝撃力で破壊するタイプの武器である。
振り下ろされる剣の角度と軌道を読んで、僅かな動きでA級0061機は打撃の芯を外す。最も装甲の厚い肩部装甲で受け止められれば、大きな損傷には至らない。ここでも、御堂の動物的な直感と反射神経が発揮される。
「でも、これでは……」
一方的に攻撃を受け続けるこの状況では、長い時間は耐えられない。
機体の損傷を最小にして帰還するのが最優先な状況では、避難者を犠牲にしても機体を保全すべきなのだ。
しかし、同時に「B級ペルセウスの行動」に青柳は疑問を抱く。
「何故、わざわざ生身の人間を狙ったの?」
非常口から出てきた人物の分析を管制AIに行わせる。
『第3戦団中央本部軍所属、東城賢治准将』
『三連型陸上戦艦グリフォン艦長』
そして、日嗣皇子に会談を申し入れた将校である。
南部方面軍は、当初から格納庫にビームを撃ち浴びせていた。格納庫に避難した者たちを狙っていたのか?
同様の疑問を、11番機でも月夜見が抱いていた。
御堂ならば、生身の人間がレーザーで撃たれるのを黙って見ていられないのは想像できる。敢えて、生身の人間を狙うことで、A級機体を無防備な状態にさせたとすれば、B級ペルセウスのパイロットは慧眼である。
しかし、御堂がCユニットにいるのは偶然だ。
「青柳の判断に任せるしかないか」
追従してきたB級ペルセウスと交戦中の11番機は、格納庫から離れている。格納庫から出てきた人物を特定できる映像は得ていなかった。




