第304話 重大な立場
柳沢大佐に後を託す形にして、東城准将は地上階に繋がる階段を上る。自身を含めた戦艦『グリフォン』の兵員が、極めて重大な立場にいるのを認識せざるを得なかった。
戦艦『グリフォン』は、第3戦団中央本部から統括司令・周防崎大将の名代として、その親書を預かって来ている。それが、叛逆者である南部方面軍に与したことになれば、第3戦団中央本部が叛逆に加担したことになる。
そして「日嗣皇子暗殺のために偽りの会談を申し入れた」となれば、星間協定が禁ずる卑劣な戦闘行為として「無制限かつ法の制約を受けない」報復を受ける立場になってしまう。
「今現在『帝の敵』とされ、皇城府との戦闘に突入していても星間協定の定めに拘束された中での戦いだ。しかし、報復となれば……」
冷酷無比な太后による徹底した粛正が始まり、第3戦団に軍籍を持つだけで殺戮の対象になる。多くの外殻都市も嵯峨州に倣って第3戦団を排斥するだろう。
「この戦いを、何としても丸く収めなければならない!」
その決意を固めて、東城准将は格納庫の非常口の扉を開けて外へ出た。
格納庫の外には、東城准将が想像していなかった戦闘が繰り広げられていた。
巨大な楯を掲げているジークフリード型重甲機兵に、ペルセウス型重甲機兵が剣を振るって攻撃している。鋼の巨人が衝突し、大地を揺らしていた。
「な……なんだ?」
地下シェルターで確認したのは、格納庫から少し離れた地点での戦闘だった。格納庫の直近で、こんな戦闘が行われているとは、東城准将は考えていなかったのだ。
「!」
ジークフリード型重甲機兵が頭部を回して非常口に機械眼球を向けた。東城准将は、自分がジークフリード型重甲機兵に認識されたのを自覚する。
格納庫の非常口で扉が開き、人間が出て来たのをA級0061機の管制AIが警告した。御堂は、Cユニットのメインモニターで、緑の軍服を着る上級将校の姿を確認した。
トントントン
トントントン
マウスピースを咥えて喋れない御堂は、Cユニットから非常事態を示す合図をSユニットに送った。青柳もそれには気付いていたが、敢えて冷たい対応を取った。
「A級0061機をできるだけ損傷を受けずに帰還させるのが最優先です。他のことに気を取られないで下さい」
御堂からの了解の返信がない。どうやら、納得しかねているらしい。
御堂への念押しをしようとした時、対峙しているB級ペルセウスに変化があった。B級ペルセウスが、人間を見つけたのだ。
B級ペルセウスの胸部から、対人レーザーが人間に向けて撃たれる。




