第303話 地上へ
南部方面軍は、第3戦団を『帝の敵』とする切っ掛けを作った組織だが、それでも「第3戦団の同士」である。戦艦『グリフォン』の一般兵90名の身代金も用意してくれた。
戦いを仕掛けざるを得なない理由があった、と考えている。
東城准将が、シェルター入口に立つラインゴルド兵を力ずくで退かし外へ出ると、一般兵もそれに続く。
地上階へ繋がる階段に向かう東城准将。それを止めようとするラインゴルド兵を、60人の一般兵員が押さえ込む。
「お待ち下さい、准将!」
見かねた柳沢大佐が、東城准将を追いかけた。
「現在、地上で戦闘をしているペルセウス型重甲機兵は、南部方面軍の正規兵とは思えません。第3戦団の同士としての説得が通用するとは思えません」
近衛軍が正規に運用する機体は、ジークフリード型である。一部の傭兵部隊がペルセウス型を使っているが、正規兵はペルセウス型を使用しない。
そして、30人の一般兵を「戦艦『ワイバーン』へ移送する」はずの空中移送機が、方向を変えて日嗣皇子を攻撃したのも目撃している。
「所属章を見ただろう! あれは、第3戦団の所属章ではないか!」
東城准将は、ベルセウス型重甲機兵を「第3戦団が雇った傭兵部隊である」と解釈していた。
「帝国外勢力が、第3戦団の所属章を偽装していると考えるのが妥当です」
「それは星団協定に違反する行為ではないか。我が第3戦団が、そのような卑劣な行為に加担するはずがない」
「傭兵団が、傭兵団の紋章を表示しないのも違反行為です!」
柳沢大佐の指摘に、東城准将も言葉に詰まる。柳沢大佐の指摘は明確である。
南部方面軍は帝国外勢力と通じて、日嗣皇子を暗殺しようとしたのだ。東城准将との会談は、日嗣皇子を誘い出すために利用されたと言うことだ。
「南部方面軍の造反は、間違いないということか」
「はい」
東城准将の問いかけに、柳沢大佐はキッパリと首肯する。それを否定する材料は、東城准将にはない。しかし、まだ東城准将は割り切れないでいた。
南部方面軍は、いつ造反を決意したのか?
ナーガオウ州議事堂包囲戦の時点では、純粋に「都市の被害を最小に留めたかっただけ」の武力行使ではなかったか。だからこそ中央本部のガルーダ部隊とも協力したのではないか。
皇城府の一方的な『帝の敵』宣言が、その後の南部方面軍を追い詰めてしまったのではないか。
「柳沢大佐は、60名の一般兵をシェルターに戻してくれ。俺1人で地上に出て、カイザーと日嗣皇子を説得してみる」
そう言うと東城准将は、地上への1人で階段を上った。




