第300話 状況判断
B級ペルセウスがロングソードを振りかぶる動きに合わせて、手楯に隠れながら僅かに前進する。剣戟の芯を外すことで、最小の動きで機体に伝わる衝撃を小さくできていた。
御堂の操縦センスは決して低くはない……改めて、青柳は感心する。
青柳は、サブカメラを格闘戦の現場に向けた。サブモニターに、ペルセウス型とジークフリード型の重甲機兵が剣で打ち合う集団戦の映像が映った。
3機のB級ペルセウスには動揺の気配が走る。3機が互いの視線を交差させ、逡巡しながら指揮官機のA級ペルセウスを見る。
11番機が近づいて来るのだ。
日嗣皇子暗殺計画は、日嗣皇子に11番機に搭乗されてしまったことで頓挫したが、ここで11番機を撃破できれば『当初の目的』を達成できる。
しかし、3機のB級ジークフリードと戦いながら、更にA級機体とも戦うのはリスクが高すぎる気もする。
「命令を即座に実行する訓練はされているようですが、自律的な判断はできないようですね」
兵の質の違いを、射流鹿は見抜いた。逡巡し一瞬動きの鈍ったB級ペルセウスの1機を、11番機とB級ジークフリードが左右から挟み撃ちする。
……退くか? 攻めるか?
数瞬の戸惑いの後、ロングソードを11番機に向かって振り上げる。
11番機の脚と腰が青白く発光した。副推進装置と主推進装置の焔が尾を引き、B級ペルセウスの正面に体当たりをした。
11番機の装甲の隙間から噴き出した光粒子が、2機の重甲機兵を包む。
ロングソードを振り下ろし損ねたB級ペルセウスが、その背後にいたB級ジークフリードの斬撃に倒れるのは当然の結末であった。
背後からコクピットのある胸部を貫かれて、B級ペルセウスはZCF機関を強制停止させる。
擱座したB級ペルセウスの傍に立つ11番機は、ゆっくりと左手を挙げて格納庫前で手楯を掲げるA級0061機を指差した。
B級ジークフリードは、右手の打刀を握り直すと指先の方向に向かう。
サブモニターで、友軍機がこちらへ向かうのを確認して、青柳は胸を撫で下ろした。
「B級ペルセウスを1機撃破しました。友軍機が来ます」
青柳の報告に、Cユニットからトントンと返事が返ってくる。舌を噛まないようにマウスピースを咥えさせられている御堂の返信である。
「!」
もう一度サブモニターを覗き込んだ青柳は、背筋が凍り付くような悪寒を感じた。11番機が、こちらに近づいて来ているのだ。
「え……ええ?」
青柳の脳裏に、ナーガオウ州議事堂包囲戦の事件が蘇る。




