第296話 臨機応変な用兵
「ターミナルビルを攻撃していたB級ペルセウスが二手に分かれた。3機が、格納庫に向かっている」
B級ペルセウスの動きを追跡する月夜見が、射流鹿に報告する。
「狙いは11番機ですか?」
南部方面軍の、当初の目的は日嗣皇子たる射流鹿の暗殺である。その射流鹿が搭乗する11番機が、標的になるのは自然な流れだ。
しかし、月夜見の分析は違った。
「いや、標的はA級0061機だ」
何故にA級0061機が、南部方面軍の標的になるのかと射流鹿は一瞬だけ困惑する。
A級0061機のコクピットでも、青柳が同様の報告を御堂に伝えていた。
「B級ペルセウス3機、こちらに来ます」
「どうするのよ!」
思わず、御堂の声が裏返る。
兵器として上位にあるA級機体と言えど、機械としての耐久性はB級と変わらない。操縦できなければ、ただの標的として破壊されてしまう。
「楯に身を隠して、耐えて下さい」
「え?」
「ラインゴルドの2機を戦線に出す目的は果たしました。後は、この機体を最小の損傷で『胡蝶』に帰艦させるのが優先事項です」
「だったら、攻めた方がいいわ!」
攻撃こそ最大の防御ではないか……と御堂は考える。
手楯装備での出撃だが、標準武装の打刀は左腰にある。戦う術がないわけではない。
カイザー機の攻撃を躱しながら、A級ペルセウスは、敵対しているジークフリード型重甲機兵の動きを観測・分析していた。そして、最後に戦艦『胡蝶』から出撃したA級機体に不自然な挙動があることを見逃さなかった。
A級ジークフリードの動きは明らかにの鈍い。それは手楯の重さだけではなく、何かしら別の理由が想定できる鈍さである。
『何らかの整備不良があり、不十分な状態で出撃してきた』
それならば、このA級機体こそ狙い目である。
A級機体を1機でも完全破壊できれば、S33中継基地を機能不全にする以上に、帝国の近衛軍に与える損失は大きい。ターミナルビルの防衛をしているラインゴルドのB級ジークフリードを足止めする3機を残し、他の3機をA級ジークフリードに向かわせたのだ。
A級ペルセウスの臨機応変な用兵に、月夜見は感心していた。
「なかなか大したものだな。11番機がカイザー機の支援に向かえば、A級ペルセウスを撃破する前にA級0061機を失うかも知れない。A級0061機を守るしかなくなったな」
現存するA級機体は多くない。天然ゼナ・クリスタルの枯渇により新造するのはほぼ不可能である。
より大きな損失と言う意味なら、A級機体は標的として相応しい。




