第294話 射流鹿の参戦
月夜見の「A級機体のCユニットが未調整」と言う報告を受けても、射流鹿は御堂がCユニットに乗っているとは想像しない。射流鹿の意識の中からは「御堂咲耶」の存在は完全に消えていた。
「格納庫の前で盾となっていた2機を戦線に戻すための配慮としては適切です。さすが有馬艦長ですね」
月夜見が「堅物で口煩い」と称する戦艦『胡蝶』の艦長は、有馬啓午中将である。堅物で口煩くとも、その能力を認めるからこそ第4戦団に引き抜いたのだ。
有馬艦長の采配に関しては、射流鹿も全幅の信頼を寄せている。
「では、僕はどうしましょうか?」
「カイザーの支援に回れ。指揮官機であった大崎機を撃破した途端に、残る戦力でS33中継基地に被害を広げる戦術に切り替えてきた。末端のB級ペルセウスは玉砕する覚悟で戦っているだろう。それが止まるとしたら、指揮権を引き継いだA級ペルセウスを撃破するしかない」
ラインゴルドは、3つの優先事項が課せられた上で戦っているはずである。
「日嗣皇子の安全」
「東城准将と『グリフォン』搭乗員の生命」
「S33中継基地の施設の保全」
その中で最優先事項である『日嗣皇子』がラインゴルドの支援のために戦いに参加するのは本末転倒ではあるが。
「了解しました」
11番機の機械眼球が、発着路北側で交戦しているカイザー機を捉える。A級機体同士の戦いだが、A級ペルセウスの方が優位に立っているように見えた。
大崎機から奪った打刀を投げ捨てる。そして、最初に自らが手放した太刀を拾い上げた。11番機の右手が太刀を握り直すと、機体装甲の隙間から光粒子が流れ出る。11番機は、ゆっくりと発着路を北に進に始める。
カイザー機と戦いながらも、A級ペルセウスは目まぐるしく信号弾を撃ち上げている。数の上での不利を、配置と移動の用兵で補うつもりらしく、その度にB級ペルセウスの動きに変化が現れる。
「ベルーナ、敵のB級の動きは?」
「え……ちょっとお待ち下さい」
ペルセウス型重甲機兵は、単座型でありA級機体にもSVはいない。ハードウェア制御と管制支援はAIが行っている。
熟練したSVならばAIを凌駕する能力を発揮するが、今のカイザー機は未熟なSVを配している。今回に限っては敵のA級ペルセウスの方が、指揮官機としては優位であった。
A級ペルセウスは、戦いを急がなかった。麾下のB級ペルセウスがS33中継基地に被害を広げる時間を稼ごうとしているのである。
「11番機です!」
11番機の接近に気付いたのは、両機ほぼ同時だった。




