第289話 機械の限界?
「今から奥永主任と音声通信で出撃と装備に関する打ち合わせを行います。時間が勿体ないので、その音声をCユニットに繋いでおくので聞き漏らさないで下さい」
「え……あ、了解です」
青柳の返事はなかった。ヘッドセットのイヤホンは、奥永の声に一方的に変わる。
『……今、艦長と話を付けた。A級0061機を、手楯装備で左舷デッキに上げる』
「ちょっと! 手楯装備って……」
ジークフリード型重甲機兵の手楯とは、機体の全身を隠せる程の大型の盾である。集団戦の最前列に出て、敵の遠距離攻撃を受け止め、格闘戦用装備の後続を守る……文字通りの『盾』の役割をするための装備である。
『手楯装備、了解です』
奥永主任の指示を、青柳が復唱する。
「了解するなー!」
喉が掠れるほどの大声を出したはずだが、奥永主任と青柳は気付く素振りをしない。
『空中移送機発着路の脇にある格納庫へ向かえ。民間人かそれに準じる非戦闘員が避難しているらしく、ラインゴルドの機体2機が格納庫の前で棒立ちになっている。手楯装備のA級が行けば、あの2機が戦闘に参加できるはずだ」
『わかりました。発着路脇の格納庫へ向かいます』
「ちょっとー!」
御堂は、自分の操縦する機体で敵を撃破するつもりでいた。操縦の腕を月夜見や日嗣皇子に見せつける機会が奪わる流れに更に大声で叫んでみた。
しかし、奥永主任も青柳も全く意に介さずに会話を続けている。この時になって、よやく御堂はCユニットからの音声が切断されているのに気付く。
『あの、嬢ちゃんには勝手なマネは絶対にさせるな。機体がCユニットを認識さえすれば戦闘モードでZCF機関を動かせる。そのためだけの部品になってくれればいい。100パーセントの絶対服従を約束させろ。そうでなければ、出撃は取り消しだ』
「あ……あたしの人権……」
聞こえていないのはわかっているが、思わず声が漏れた。
『同調調整ができていないパイロットと機体で、格闘戦ができるはずがない。人間は努力や根性で限界を超えられるのかも知れないが、機械に努力や根性はないし限界も超えられない。機械に対する愛情ってのは、機械の限界を見定めることだが……あの嬢ちゃんには、それができてない』
奥永主任の言葉に、御堂の脳裏に何かがよぎる気がした。
『戦場で、限界を見誤ったら誰かが死ぬ。この程度の戦場で死者を出すなんて馬鹿馬鹿しいからな』
嵯峨州解放戦の西門での最終決戦。
ネロの命を失わせた原因は、真に『御堂がGV3Xの限界を見誤った』ことにあった。




