第288話 付け焼き刃?
御堂がいても、それでA級ジークフリードが動く保証はない。
主骨格を天然のゼナ・クリスタルとしているA級機体には、パイロットの体質との相性がある。和合率で90パーセント未満ならば、機体はパイロットを認識しない場合もある。
奥永主任は、改めて御堂の顔を見つめた。そして整備スタッフに、Cユニットのハッチを開けるように指示を出す。
「乗ってみろ」
「え?」
まさか……と思った御堂だが、奥永主任の気が変わらないうちにとCユニットに乗り込んだ。御堂を乗せたコクピットは機体に収容されて、胸部装甲が閉じられる。
「主任、いいんですか?」
主任の命令とは言え、部外者をA級機体に乗せることに整備スタッフは納得しきれない様子である。
「和合率が低くて動かなければそれまでだ。もし、万一動くようなら盾には使える」
機体がCRを認識すれば戦闘モードは起動できる。敵の武装がビーム砲なら、戦闘モードのZCF機関が発生させる電磁波で威力を減衰させられる。例え、戦えなくても立っているだけで盾にはなる。そう奥永主任は考えていた。
真っ暗なCユニットで、御堂は補助灯のスイッチをオンにした。生まれて初めてのA級機体だが、複座型のコクピットはGV3Xと全く同じである。
仄かな灯りの中で、シートから接続ケーブルを引き出したところで困惑した。
重甲機兵のパイロットは、外科手術によって指先大のゼナ・クリスタルを身体の何処かに移植している。そのゼナ・クリスタルを通して、パイロットの神経と重甲機兵の主骨格が神経電流で繋がることになる。
御堂も、左右の腋下部分にゼナ・クリスタルを移植している。パイロット・スーツならば、その部分にアタッチメントが取り付けられてあるため、ケーブルを容易に接続できる。
しかし、今の御堂は私服でパイロット・スーツを着ていなかった。
「ま、いっか」
コクピットを降りたら、あの主任の気が変わってしまうかも知れない……御堂はブラウスを脱いでブラジャーも外す。裸になった上半身で、シートから伸びるケーブルを左右の腋下部に当てた。補助バンドで接続ケーブルを上半身に固定する。
Sユニットの計器にグリーンのランプが点灯した。
A級ジークフリードが、Cユニットの御堂を認識した。Sユニットからその報告を受けた奥永主任は、小さく頷いた。
「御堂准尉、青柳です。聞こえますか?」
「青柳少尉!」
無神経さに定評のある御堂でも、この場面では緊張している。知り合いの声が聞けたことにホッとした。




