第284話 仕切り直し
カイザー機も、自身の打刀の間合いまでA級ペルセウスとの距離を詰めていた。GV3型機は、11番機に撃破される……その確信を得て、カイザー機は一気に踏み込んで行く。
1分間の『猶予』に躊躇ったA級ペルセウスも反応が遅れた。
左腕に装着した凧型盾でカイザー機の打刀を受け止めようとしたが、剣先は凧型盾の脇をすり抜けてしまう。
地を這うような下段からの一閃が、A級ペルセウスの腰と右脚部の装甲板の隙間に突き刺さった。人間で言うなら右鼠径部を刺された状態だろう。A級ペルセウスの自重を支えられなくなった右膝が、アスファルトに崩れ落ちる。
苦し紛れに振り回そうとした戦斧を握る右腕は、カイザー機の次の斬撃で肘部分から斬り落とされてしまった。
戦闘不能となったA級ペルセウスは、それでも投降の意思を示さなかった。
「こいつら、傭兵ではなかったのか?」
傭兵ならば自軍の損害や消耗を抑えることを優先する。敵軍の損害や消耗を優先するのは正規軍であり……この部隊は、帝国と対立する他国の正規軍かも知れない。
ペルセウス型重甲機兵を『どこかの傭兵部隊』と推測したことが、間違っていたのである……カイザーは、自らの判断ミスを実感した。
「嵯峨州の解放戦でも、トーチス傭兵団を名乗ったイルドラ正規軍のペルセウス型重甲機兵部隊が参戦していました。南部方面軍と外国勢力が密に連携している可能性は高いと思われます」
ベルーナの、どこか他人事の「冷静な分析」がSユニットから届く。
「そう言う情報は、先に伝えろ!」
「はあ……気をつけます」
ベルーナの返事には「謝罪はするが、納得していません」との気持ちが露骨に表れている。確かに、今回の判断ミスは指揮官たる自分の責任だが……それをサポートするのがSVの役目でもある。
「まあ、今は仕方ないな」
若干の諦観を抱きつつ、若手の成長に期待することにする。
カイザー機は、重甲機兵の急所の一つである喉元を抉り対峙していたA級ペルセウスを完全に戦闘不能にした。
そして、もう1機のA級ペルセウスと向かい合う。そのA級ペルセウスを牽制していた第4戦団のB級ジークフリードは、既に11番機の支援に回っている。
「編成途中の第4戦団が、これ程まで的確に連携するとは驚かされる。信号弾で情報伝達をしているわけでもない……事前の訓令が徹底していると言うことか」
とは言え、ラインゴルドとしてはS33中継基地の被害も最小に抑えなければならない。
カイザーは、残るB級ペルセウスの動きをベルーナに報告させた。




