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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第九章

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283/349

第283話 1分未満

「な……なんだ? どうするつもりなんだ!」


 大崎中佐が「1分間」を宣言してから、40秒が経過した。

 日嗣皇子の11番機は、眼前に迫っている。しかし、手にした武器を捨てての丸腰である。「待つ」と宣言した自らが、丸腰となった機体を攻撃していいのか?

 しかし。

 手を伸ばせば届く距離にまで接近された状態で、攻撃を仕掛けられたら躱しようがないのだ。


「ラインゴルドのA級およびB級も位置を変えています!」


 与えられた時間内に移動したのは、11番機だけではない。カイザー機も、対峙していたA級ペルセウスとの距離を詰めていた。

 そして、第4戦団とラインゴルドのB級ジークフリードもだ。

 45秒経過。

 大崎中佐の額を冷たい汗が流れた。

 ……万が一、先に攻撃を仕掛けられたら!

 大崎中佐の脳裏には、一方的な攻撃で「部隊の壊滅」する様子がよぎった。

 48秒経過。

 流れる1秒間が異様に長く感じる。口の中は乾いて、肺に通じる気道が冷たく、呼吸の度に締め付けられるような違和感がした。



 11番機の機体から、光粒子が流れ出す。ZCF(ズィーフ)機関が出力を上げて、各駆動部へ流れる電流を増加させたのだ。

 ……攻撃されてしまう!

 GV3型機のメインモニターに映る11番機……頭部の兜の下、顔面部分を保護する面頬めんぼおの奥で右の機械眼球が輝くのが見えた。


「うおぉぉぉぉ!」


 52秒が経過した時に、GV3型機は、11番機に打刀で斬り掛かっていた。しかし、斬撃に威力を乗せるには、両機の距離は近すぎた。11番機の左手は、GV3型機の打刀の鍔元を抑えて刃を止めてしまう。


「し……しまったぁ!」


 反射的に剣を振るってしまったことを、大崎中佐は後悔した。何とか体裁を整える「言い訳」をしなければならない……外部スピーカーに通じるマイクに向かおうとしたが、既に遅かった。



 11番機の右手が、GV3型機の左腕を強打する。衝撃で右掌駆動部の電圧が低下し、右掌の握力も下がる。11番機は、GV3型機からあっさりと打刀を奪い取っていた。

 奪われた打刀の剣先が、GV3型機の鳩尾みぞおちの辺りに突き立てられ、その内部を抉る。鳩尾から突き立てた打刀は、背骨に相当する主骨格まで届いてそれを砕いた。

 GV3型機の駆動音が一瞬だけ甲高く唸り、そして重く低いノイズ音になり停止する。

 ……カチン

 ……カチン

 緊急停止で強制冷却されたZCF(ズィーフ)機関が乾いた音を響かせた。

 11番機は、GV3型機から打刀を引き抜く。GV3型機は、発着路のアスファルトの上に両膝を付いた。

 まだ1分間は過ぎていなかった。

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