第279話 プランBへ
GV3型B級ジークフリードのコクピットで大崎ケン中佐は、メインモニターに映る11番機を苦々しい思いで見ていた。
嵯峨州の防衛を委任されていた南部方面軍は、このS33中継基地周辺の地形も把握している。ラインゴルドに探知されることなく陸上戦艦を接近させ、6機の重甲機兵による奇襲で先手を取れたはずだった。
東城准将との会談に生身で現れる日嗣皇子を、強襲し暗殺する……その計画は、日嗣皇子が11番機に乗り込んだ時点で失敗した。
更に、3機のB級ペルセウスに対して、ラインゴルドは6機のB級ジークフリードで対応している。A級ペルセウスの1機はカイザー機と対峙し、もう1機のA級ペルセウスもB級ジークフリード5機に足止めされている。
数の上で圧倒的に不利な状況となり、奇襲を仕掛けたつもりで実は「罠に誘い込まれていた」のだ。
「プランBに変更だ。B級ペルセウスの武装を交換させろ」
大崎中佐の指示を受けたSユニットの佐藤優大尉は、GV3型機のバックパックから信号弾を撃ち上げた。
それを確認したB級ペルセウスは、ロングソードを鞘に収めライフル型ビーム砲に武装を変更した。
ラインゴルドのB級ジークフリードが、震えるような挙動をする。
重甲機兵のZCF機関が発生させる電磁波は、レーダーや無線に干渉させると同時にレーザーやビームの光学兵器のエネルギーも減衰させる。重甲機兵の機体は「電磁波の障壁」を持つため、レーザーやビームで致命的な損傷を受け難くなっている。それ故に、対重甲機兵の戦いは物理的な打撃を与える剣や実弾が用いされている。
その上でB級ペルセウスは、敢えてビーム砲に装備を持ち変えた。
3機のB級ペルセウスは、ラインゴルドのB級ジークフリードに向かってライフルを乱射する。B級ジークフリードに命中するビーム束は、機体が発生させる電磁波に減衰させられて、青白い火花となって消える。
しかし、機体に命中しなかったビーム束は、真っ直ぐに直進して背後の中継基地の建物を焦がした。建物への被害を抑えるためには、B級ジークフリードは敢えてビーム砲の的になるしかない。
「傭兵のラインゴルドには有効な戦術だ。クライアントである嵯峨州の管轄するS33中継基地を戦火に晒すわけにはいかないからな」
「そうですね」
月夜見の分析に、射流鹿は吐き捨てるように呟く。同意はするが、納得はしていない。
「ラインゴルドの動きを封じて、第二陣の到着まで時間を稼ぐつもりだな」
みすみす策に乗りざるを得ないことが、射流鹿の癪に障るのだ。




