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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第九章

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第277話 カイザー機

 カイザーとしては、故意に間をおいて敵機に帰還する機会を与えたかった。

 GV3型はともかく、他のペルセウス型重甲機兵は、おそらく同業の傭兵と思われる。傭兵同士の暗黙の了解として「自軍の消耗を避けるために、余計な戦闘を回避する」との不文律もある。

 しかし、戦いの火蓋を切ったのは、A級ペルセウスの方だった。

 正面のA級ペルセウスが、カイザー機にロングソードを突き出す。もう一機は腰と脚部の推進機関スラスターで機体を浮かせて、カイザー機の後ろへ回り込む。


「退かないつもりか?」


 前後からの挟撃を警戒するが、第4戦団のB級ジークフリードが、カイザー機の後方に割って入る。後方に回ったA級ペルセウスは、3機のB級ジークフリードにあっさりと足止めされた。

(アリスやネオンより、第4戦団の方が機敏に動くとはな)

 飛び道具を持ったアリス機とネオン機を後方に置いたのは、敵のこんな動き(・・・・・)を牽制させるためだったはず。カイザー隊のB級よりも、第4戦団のB級の方が適切に連携するのが悔しい気もした。


「アリスとネオンは、第4戦団のB級を支援しろ。俺は、前方のA級ペルセウスを片付ける」


 カイザー機のバックパックから信号弾が上がると同時に、正面のA級ペルセウスは後退して距離を取った。間合いから外れた距離を確保し、ロングソードを肩の高さに構える。

 カイザー機も、腰と脚部の推進装置スラスターで機体を浮かせながら、下げた剣先をゆっくりと正面に向ける。



 A級ペルセウスの背中が目映く発光する。バックパックの主推進装置(バーニア)フル出力で、一機に距離を詰めてくる。


「上です!」


 僅かに遅れて腰と脚部の推進装置スラスターが発光したのを、ベルーナは見逃さなかった。およそ10メートルの高さを上に跳躍して、A級ペルセウスは真上からロングソードを振り下ろす。

 カイザー機は、腰を沈めてロングソードの刃と距離を広げて斬撃の芯を外す。ジークフリード型重甲機兵の最も強固な肩部装甲が、ロングソードを弾いた。

 しゃがみ込んだ体勢から、カイザー機が機体の弾機を効かせて立ち上がる。

 ……ガチン!

 2機の重甲機兵は、互いの頭部を衝突させて硬質な金属音を響かせた。


「体当たりは、機体重量の軽いジークフリード型の方が分が悪いです」


 他人事のような指摘が、ベルーナから入った。


「わかってる!」


 A級ペルセウスとカイザー機は、互いの兜部分で押し合いをする程に密着していた。装甲の擦れる振動と鈍い擦過音がコクピットに伝わってくる。

 先に後ろの引いた方が、次の動作で出遅れる。双方ともに引き難い体勢となっていた。


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