第275話 容赦なし
上空から突然のビーム射撃を受け、左の翼を破壊された空中移送機は、大きく左方向に流されながらも不時着を試みる。しかし、更なるビームの直撃が空中移送機の制御を完全に失わせた。
機体の前頭部から地面に激突して、そのまま宙返りするように回転し、機体下部を上に晒して爆発……立ち上る黒煙を背にして、白い重甲機兵が舞い降りる。
「容赦なし……か」
肩部装甲に『XI』のローマ数字が刻まれたA級ジークフリードを見て、カイザーは思った。南部方面軍としては、解放した『グリフォン』搭乗兵の30人を人質にする作戦だったのだろうが、第4戦団には通用しなかった。
「単独で待機していた月夜見様は、空中移送機に人質がいたのも知らなかっただろう」
南部方面軍の奇襲は、カイザーを出し抜くことには成功した。しかし、迅速過ぎたために人質の存在が周知される前に撃墜されてしまったのだ。
「早く、救助隊を向かわせろ!」
重甲機兵による戦闘から避難するために、発着路の脇の格納庫へ誘導された東城准将は、ラインゴルド兵に声を荒らげていた。自らの部下30人を乗せた空中移送機が炎に包まれているのだ。
一刻も早く救助に向かい、1人でも多く助け出したい……そう思った。
しかし、それは拒否される。既にS33中継基地は、重甲機兵同士の戦場となっている。救助部隊を出すことはできなかった。
発着路のアスファルト上に着地した11番機は、青い軍服を着た士官の前で片膝をついて腰を屈める。鈍く重いノイズ音をあげる白い機体は、胸部の装甲板を開いた。
「射流鹿、乗れ!」
胸部から迫り出したコクピット下部のSユニットから、月夜見が叫ぶ。上部のCユニットから昇降用ワイヤーが降りて、それに射流鹿が掴まる。ワイヤーが巻き上げられて、Sユニットの上部にあるCユニットへ射流鹿の身体を運ぶ。
胸部装甲が閉じて、11番機はゆっくりと立ち上がる。その間に、Sユニットに入った射流鹿はシートから伸びるケーブルを腋下部にアタッチメントに接続した。
「Cユニット接続しました。機体の運動制御を回して下さい」
「了解。制御をCユニットへ委譲する」
月夜見の声と共に、Cユニットの計器に一斉に灯が入いる。
ブーン……
脳が軽く揺さぶられるような疑似的な音が響いた後、まるで身体が二重にかさなるような感覚。11番機の身体が、射流鹿の神経と重なった。
11番機は、右手に持っていたライフル型ビーム砲を投げ捨てる。
空になった右手は、頭部の兜から重甲機兵の顔面と喉元を保護する面頬を引き下げた。




